影響

これまで生じている気候変動影響

全国

害虫
  • 西南暖地(九州南部などの比較的温暖な地域)を中心に発生していたイネなどの害虫であるミナミアオカメムシやスクミリンゴガイが、近年、西日本の広い地域から関東の一部でも発生し、気温上昇の影響が指摘されている。
  • 海外から九州地方に飛来するイネの害虫であるウンカ類の数は、ベトナム北部での越冬や強い上層風の頻度が関係する。
  • イネの害虫以外でも、気温上昇による分布の北上・拡大、発生量の増加、越冬の可能性が報告・指摘されている。
病害
  •  圃場試験の結果、出穂期前後の気温が高かった年にイネ紋枯病の発病株率、病斑高率が高かったことが報告されている。
  •  一部の地域では、高温によるレタス根腐病やトウモロコシ根腐病の発生が報告されている。
  • ライグラスいもち病の発生地域が北上しており、温暖化との関連が指摘されている。
雑草
  • 奄美諸島以南に分布していたイネ科雑草が、越冬が可能になり、近年、九州各地に侵入した事例がある。
  • 北海道では、土壌凍結深が浅くなったことにより、収穫後圃場に残存するバレイショの雑草化(野良イモ化)が問題となっている。
  • 東北地方では、気温上昇はチガヤ(イネ科の雑草)の生態型の分布特性に影響を及ぼしている。
  • 特定外来生物のナルトサワギクの分布の拡大には、気温が高い四半期の平均気温が大きく関与していると推定されている。
かび毒
  • 土壌中に生息するアフラトキシン産生菌の分布を全国で調査した結果、産生菌の分布には気温が関与していることが推察されている。

東北

害虫
  • アブラナ科の害虫であるコナガは、岩手県盛岡市の露地では越冬できないと考えられていたが、1~2 月の月平均気温あるいは積雪期間の条件より越冬していた可能性が指摘されている。
病害
  • レタス根腐病については、青森県の夏秋レタスで、2010 年及び 2012 年の夏季の高温による甚大な被害が報告されている。
  • ライグラスいもち病の発生は、1970 年代には宮崎県、高知県、岐阜県、静岡県、栃木県に限られていたが、近年は石川県、富山県、新潟県、宮城県でも病原菌が採集されたとの報告がある。本病の発生と気温との間に高い相関があるため、温暖化により発生地域が北上している可能性が指摘されている。
雑草
  • 東北地方では、気温上昇により普通型チガヤ(イネ科の雑草)の分布が北上しているのではなく、山形県中部以北で普通型と寒冷地型のチガヤの雑種が広く分布していることが確認され、生態型の分布特性に影響を及ぼしている。

秋田県

害虫
  • 気温上昇による害虫分布の北上に伴い、急激な発生量の増加、越冬により、以前より被害の増加傾向が見られる。
病害
  •  気温上昇に伴い、ネギの軟腐病やほうれんそうの萎凋病などの高温性の病害が増加している。
雑草
  • 気温上昇に伴い、雑草発生のスピードが速くなるなど、栽培管理に与える影響が大きいと考えられる。

将来生じる可能がある気候変動影響

全国

害虫
  • 害虫については、気温上昇により寄生性天敵、一部の捕食者や害虫の年間世代数(1 年間に卵から親までを繰り返す回数)が増加することから水田の害虫・天敵の構成が変化することが予測されている。
  • 水稲の害虫であるミナミアオカメムシ、ニカメイガ、ツマグロヨコバイについて、気温上昇による発生量の増加が予測されている。ヒメトビウンカとそれが媒介するイネ縞葉枯病の発生に関し、東北、北陸地方で潜在的な危険性が増加すると予測されている。
  • 水稲の害虫であるアカスジカスミカメの成虫発生盛日がイネの出穂期に近づくことで斑点米被害リスクが増加すると予測する研究がある。
  • 水稲害虫以外でも、越冬可能地域や生息適地の北上・拡大や、発生世代数の増加による被害の増大の可能性が指摘されている。
  • 夏季の気温上昇は、ミナミアオカメムシ及び一部のアブラムシに高温障害を引き起こす可能性が指摘されている。
病害
  • 病害については、高 CO2条件実験下(現時点の濃度から 200ppm 上昇)では、発病の増加が予測された事例がある。
  • 気温上昇によりイネ紋枯病による被害の増大が予測された事例がある。
  • 降水頻度の減少により葉面の濡れが低下し、降水強度の増加により病菌が流出するため、感染リスクが低下するとする研究もある。
雑草
  • 雑草については、コヒメビエ、帰化アサガオ類など一部の種類において、気温の上昇により定着可能域の拡大や北上の可能性が指摘されている。
  • 北海道では、気温上昇により帰化雑草イガホビユの発芽条件を満たす日数が増加・早期化するため、畑作物の播種後の発生が増加する可能性が示唆されている。
かび毒
  • 気温上昇による土壌中でのアフラトキシン産生菌の生息密度の上昇が懸念されている。

東北

害虫
  • ヒメトビウンカとそれが媒介するイネ縞葉枯病の発生危険地帯判定を行った(IS92a シナリオを前提とした ECHAM4/OPYC3・CCSR/NIES 両気候モデルによる気候予測情報を使用)結果によると、2060 年には北海道は危険地帯から外れるが、東北、北陸地方では潜在的な危険性が増加すると予測された。
  • 福島県相馬市におけるアカスジカスミカメの成虫発生盛日とイネ出穂期の予測値を比較した研究によれば、気温のみに影響を受けるアカスジカスミカメの発生盛日が気温と日長に影響を受けるイネの出穂期に近づくことにより、斑点米被害リスクが増加することが示された(MIROC-H,MIROC-M, MRI モデルによる気候予測情報を使用)。

秋田県

害虫
  • 水稲害虫については、気温上昇によりカメムシ類、ニカメイガ、ツマグロヨコバイなどの発生量の増加が予測される。
  • 水稲害虫以外についても、気温上昇により生息適地が北上・拡大し、アブラムシ類・ダニ類などの発生量の増加が予測される。
  • 降水頻度の減少や降水強度の増加により、これまでの病害虫発生状況が異なると想定されるため、病害虫の発生予測が難しくなると推測される。

気候変動適応対策

現在の影響に対する既存施策の実施状況

  • 国の環境保全型農業直接支払交付金事業(第2期対策)により、国と県と市町村が協調して、地球温暖化防止対策や生物多様性保全に効果が高い農業生産活動の取組に対し支援を行っている。
  • 病害虫の発生予察、植物防疫・農薬安全対策等に係る事業に取り組んでいる。
  • 毎年、「秋田県植物防疫事業等の推進について」「秋田県農作物有害動植物防除実施方針」を定め、役割分担や組織体制を具体化しながら推進している。

将来の影響に対する対応方針

  • 引き続き、国の環境保全型農業直接支払交付金事業(第2期対策)により、国と県と市町村が協調して、地球温暖化防止対策や生物多様性保全に効果が高い農業生産活動の取組に対し支援を行っていく。
  • 病害虫の発生予察、植物防疫・農薬安全対策等に係る事業に取り組んでいる。
  • 気候変動の影響も考慮し、毎年、「秋田県植物防疫事業等の推進について」「秋田県農作物有害動植物防除実施方針」を定め、役割分担や組織体制を具体化しながら推進する。