影響
これまで生じている気候変動影響
全国
- 主要穀物(小麦、大豆、トウモロコシ、コメ)を中心に、世界各地で気候変動による収量等への影響が報告されている。暑熱と気温上昇に伴う潜在蒸発散量の増加により、特に低緯度地域で収量が減少していることや、CO2 濃度の上昇による施肥効果と播種日の移動など簡易な対応策を考慮しても、気候変動により世界全体での平均収量が減少していること等が報告されている。
- 既に世界的にさまざまな段階の適応が進んでいる。播種日の移動や品種の変更といった栽培管理を変更する比較的簡易な対応だけでなく、栽培する作物の変更や栽培地域の移動などより大掛かりな対応も見られる。
- 穀物収量の減少が社会・経済に影響を及ぼした近年の事例として、オーストラリアでの干ばつなど異常気象による世界的な減産が 2006~2008 年の穀物価格高騰の一因になったこと、2010 年のロシアの熱波と干ばつによる小麦の供給不足が中東や北アフリカで暴動を引きおこしたこと、2012 年の米国の高温・乾燥による減産でトウモロコシや大豆の国際価格が史上最高値を更新したことなどが報告されている。また、1983~2009 年の 27年間では主要穀物の栽培面積の 4 分の 3 が干ばつによる被害を受けたことがあり、収量減少による被害額を推計した研究もある。
- 気候の年々変動(気候システムの自然変動)が穀物の収量変動の主要因だが、人為的な気候変動により、気候システムの年々変動が変調してきており、一部の地域では干ばつの深刻化を通じて作物生産に影響を与えているとする研究がある。
将来生じる可能がある気候変動影響
全国
- 世界全体では、予測される将来の気温上昇はコメ、小麦、大豆、トウモロコシの収量を減少させることが多数の文献を調査した研究で確認されている。一方で、予測される気候変動の収量影響は地域や作物、想定する CO2濃度、適応策の有無で異なる。