影響

これまで生じている気候変動影響

全国

海面養殖業
  • 高水温によるホタテ貝の大量へい死、7~10の 4 ケ月間の降水量が平年より少なく、高水温かつ少雨傾向の年におけるカキのへい死が報告されている。
内水面漁業
  • 高温によるワカサギのへい死が報告されている。

東北

  • 青森県では、高水温によるホタテ貝のへい死が報告されている。

秋田県

  • ワカメ養殖においては、種苗の質も影響している可能性もあるが、低い収穫量の要因として、秋季の水温低下の遅れが、種苗の沖出し後の芽落ちを引き起こしたとみている。
  • 内水面養殖においては、魚種にもよるが、気温や水温上昇が摂餌低下や産卵不調を引き起こし、その結果、飼育期間が延長するなど、作業性に影響する可能性がある。
  • 内水面の養殖では河川から水を引き入れて養殖池に利用している所も多く、近年は水温の上昇に対応できない魚類が河川水の温度上昇によりへい死する事案も出ている。
  • アユの産卵期への移行が従来より早い年も発生しており、河川水の温度が影響を与えている可能性がある。

将来生じる可能がある気候変動影響

全国

海面養殖業
  • 養殖魚類の産地については、夏季の水温上昇により不適になる海域が出ると予想されている。
内水面漁業
  • 湖沼におけるワカサギの高水温による漁獲量減少が予想されている。
  • 21世紀末頃において、海洋と河川の水温上昇によるアユの遡上時期の早まりや遡上数の減少が予測されている。
その他
  • IPCCの報告では、海洋酸性化による貝類養殖への影響が懸念されている。

東北

  • 東北地域のホタテガイ養殖では、21 世紀中頃及び 21 世紀末の RCP2.6 シナリオでは高水温の日には深く沈めることが適切であるが、21 世紀末の RCP8.5 シナリオではへい死リスクが高まり、養殖地域が縮小すると予測されている(MRI-CGCM3 モデルによる気候予測情報を使用)。

秋田県

  • マダイやヒラメなど飼育している親魚から採卵し、稚魚を人為的に生産し、放流している種では、海水温の上昇が、その生産工程や放流時期への影響が考えられる。
  • サケ科魚類であるイワナやヤマメは高温に弱く、高温耐性のある個体を作出するため選抜育種をしても限界があり、湧水が豊富な山間部以外ではイワナやヤマメの養殖はできなくなる可能性がある。

気候変動適応対策

現在の影響に対する既存施策の実施状況

  • ワカメ養殖では、海水温変動をリアルタイムで把握し、種苗の沖出し適期を周知することで、芽落ち防止に努めている。
  • 河川水を利用した養殖場の水温を下げることは難しいことから、水温の上昇に強い個体を作出するため、高温耐性のある魚類となるように選抜育種が行われている。
  • アユの種苗生産は県で行っていることから、アユの産卵時期に合わせて、柔軟に生産が開始できる体制を整えている。