影響

これまで生じている気候変動影響

全国

  • 気温上昇や融雪時期の早期化等の環境変化に伴い、高山帯・亜高山帯の植生分布、群落タイプ、種構成の変化が報告されている。大規模な植生変化としては、森林帯の標高変化、高山帯におけるハイマツやチシマザサ等の分布拡大、高山帯へのイノシシやニホンジカの侵入、高山湿生植物群落の衰退が報告されている。
  • 高山植物群落の開花期の早期化と開花期間の短縮により、花粉媒介昆虫の活動時期と開花時期のずれ(生物季節の改変による相互関係の崩壊)が観測されている。

東北

  • 青森県八甲田山の亜高山帯では、過去30年間でオオシラビソの分布域が高標高へシフトしている。

秋田県

  • 出穂期以降の高温の影響により、白未熟粒の発生、胴割れ粒等の発生により、品質低下が見られている。
  • 出穂後の高温による品質の低下(白未熟粒の発生、一等米比率の低下等)等の影響が確認されている。

将来生じる可能がある気候変動影響

全国

  • 高山帯・亜高山帯の植物種・植生、及び動物(ライチョウ)について、分布適域の変化や縮小が予測されている。例えば、ハイマツ、コメツガ、及びシラビソは 21 世紀末に分布適域の面積が現在に比べて減少することが予測されている。
  • 地域により、融雪時期の早期化による高山植物の地域個体群の消滅が予測されている。
  • 生育期の気温上昇により高山植物の成長が促進され、植物種間の競合状態が高まることによる種多様性の減少、低木類やチシマザサの分布拡大などの植生変化が進行すると予測されている。
  • 生育期の気温上昇と融雪時期の早期化により、高山植物群落の開花時期の早期化と開花期間の短縮化が促進され、花を利用する花粉媒介昆虫の発生時期とのミスマッチ(フェノロジカルミスマッチ)のリスクが高まると予測されている。
  • CO2 濃度の上昇は、施肥効果によりコメの収量を増加させることが FACE(開放系大気CO2増加)実験により実証されているが、CO2濃度の上昇による施肥効果は気温上昇により低下する可能性がある。
  • 将来の降雨パターンの変化はコメの年間の生産性を変動させ、気温による影響を上回ることも想定される。様々な生育段階で冠水処理を施した試験では、出穂期の冠水でコメの減収率が最も高く、整粒率が最も低くなることが示されている。

東北

  • ハイマツを対象としてRCPシナリオ下における将来の分布適域を推定した研究においても、全国的な適域の減少傾向が予測され、特に東北地方の山塊に孤立的に分布する個体群において適域の顕著な減少が予測されている。
  • シラビソの分布南限域に当たる四国山地や紀伊半島の大峰山系では、RCP2.6 において潜在生育域がわずかに残存するが、RCP8.5 では消失すると予測された。同様に、東北地方の山地においても、潜在生育域の縮小が予測された。青森県八甲田山では、プラス 1~2℃のシナリオではオオシラビソの生育適地はより高所に移動するとともに生育適地が 2 つに分断されることが予測され、プラス 4℃の上昇では生育適地がほぼ消失すると予測されている。

気候変動適応対策

現在の影響に対する既存施策の実施状況

  • 秋田県版レッドリストの改訂や秋田県版レッドデータブックを公表することで、希少な野生動植物の保護や生物多様性の保全対策、各種環境調査を行う際の基礎資料として活用されている。

※秋田県生物多様性地域戦略P.58参照
https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/56446