影響
これまで生じている気候変動影響
全国
- 気候変動に伴う物質収支への影響の現状について、現時点で研究事例は限定的である。
- 日本の森林における土壌GHGフラックスは、1980 年から2009年にわたって、CO2・N2Oの放出、CH4の吸収の増加が確認されている。
- 富士山麓のカラマツ林における林床部炭素フラックスについて、年平均地温の上昇に伴い年積算炭素排出量が増加する傾向が確認されている。また、林床植生の光合成量は、台風による林冠の撹乱等による、林床部の光環境の変化に大きく影響されることが確認されている。
- 降水の時空間分布の変化傾向が、森林の水収支や土砂動態に影響を与えている可能性があるが、長期データに乏しく、変化状況を把握することは困難な状況となっている。
将来生じる可能がある気候変動影響
全国
- 年平均気温の上昇や無降水期間の長期化により、森林土壌の含水量低下、表層土壌の乾燥化が進行し、細粒土砂の流出と濁度回復の長期化、最終的に降雨流出応答の短期化をもたらす可能性がある。ただし、状況証拠的な推察であり、更なる検討が必要である。
- 土壌温暖化実験により、地温の上昇に伴う土壌呼吸の上昇が各地で確認されており、正のフィードバック効果を支持する知見が複数得られている。一方、地温の上昇に伴う土壌呼吸の上昇の程度が、土壌微生物等の気候への順化により経年的に減少する傾向を示す知見も確認されており、地温の上昇が土壌呼吸に与える影響は、森林生態系の種類や立地によってもばらつきがあるものと考えられる。
- 森林土壌の炭素ストック量は、純一次生産量が 14%増加し、土壌有機炭素量が 5%減少することが予測されている。
東北
- 白神山地のミズナラ林において行われた5年間の土壌温暖化実験の結果からは、微生物呼吸により排出される CO2の量が、1℃の地温上昇により6.2~17.7%(5年平均で10.9%)増加することが明らかになった(実験条件として2.5℃の地温上昇を設定)。