影響
これまで生じている気候変動影響
全国
- 日本沿岸の各所において、海水温の上昇に伴い、低温性の種から高温性の種への遷移が進行していることが確認されている。
- 亜熱帯性の造礁サンゴの分布北限付近での北上、及び海藻藻場の分布南限付近における衰退が観測されており、海藻藻場からサンゴ群集への移行が進行している。
- 日本沿岸の海水のpHは、海域ごとにばらつきが大きいものの、全体的に低下傾向であり、海洋酸性化の進行が確認されている。
- 日本沿岸の溶存酸素についても、海域ごとにばらつきが大きいものの、全体的な低下傾向が確認されている。
- 既に起こっている海洋生態系の変化を、海洋酸性化の影響として原因特定することは、現時点では難しいとされている。
- 日本周辺に生息する海鳥の一部について個体数の長期的な減少傾向が確認されており、その原因の一つとして気候変化による餌不足が示唆されている。
秋田県
- 本県沿岸における北方系のキタムラサキウニは1990年代から激減し、ウニ漁は2010年頃にほぼ消滅した。現在は南方系のムラサキウニが分布を拡大している。
- 富山県が北限であった紅藻アヤニシキや九州西岸に分布するとされるアヤニシキの小規模な分布が確認されるなど、海藻種組成にも変化が認められる。
将来生じる可能がある気候変動影響
全国
- 海水温の上昇に伴い、エゾバフンウニからキタムラサキウニへといったより高温性の種への移行が想定され、それに伴い生態系全体に影響が及ぶ可能性があるが、定量的な研究事例が限定されている。
- 海洋酸性化による影響については、中~高位の二酸化炭素排出シナリオの場合、特に極域の生態系やサンゴ礁といった脆弱性の高い海洋生態系に相当のリスクをもたらすと考えられる。炭酸カルシウム骨格・殻を有する軟体動物、棘皮動物、造礁サンゴに影響を受けやすい種が多く、その結果として水産資源となる種に悪影響がおよぶ可能性がある。また、水温上昇や低酸素化のような同時に起こる要因と相互に作用するために複雑であるが、影響は増幅される可能性がある。
- 水温の上昇や植食性魚類の分布北上に伴う藻場生態系の劣化や、熱帯性サンゴ礁生態系への移行が予測されている。
- また、沿岸域の生態系の変化は沿岸水産資源となる種に影響を与えるおそれがある。また漁村集落は藻場等の沿岸性の自然景観や漁獲対象種等に依存した地域文化を形成している事が多く、地域文化への影響も想定される。
- 海面水位の上昇による海岸域の塩性湿地等への影響が想定される。
秋田県
- 水温上昇傾向が持続すれば、生態系に大きな変化を与えることが想定される。
- 気候変動の影響を予測するのは現時点で困難である。
気候変動適応対策
現在の影響に対する既存施策の実施状況
- 現状では、ウニ類の種交代や暖海性海藻の出現が生態系に大きな影響を与えているとは考えていないが、ウニ漁の消滅など水産業への影響は大きい。今後も海況変動や魚種交代に関するモニタリングを継続し、養殖技術の改良など漁業支援を行うほか、新たな魚種の産業利用を進める。
将来の影響に対する対応方針
- 今後も海況と生物種組成のモニタリングを継続しながら、新たな魚種の産業利用を進める等の取組を行う。