影響
これまで生じている気候変動影響
全国
- 全球的には、気候変動による生態系を構成する生物種の種構成や生物季節、種間の相互作用の変化が生態系の構造や機能に影響を与え、結果として既に生態系サービスへの影響が生じているとする報告がある。
- 一方、国内において気候変動による生態系サービスへの影響を明らかにした研究は少なく、今後の研究が望まれる。
- 2016 年に石西礁湖で発生したサンゴ礁の白化は、同地域のサンゴ礁がもたらす生態系サービス(漁業生産・水族館への魚の供給、レクリエーション・ダイビング、海藻の防除)の経済価値を減少させたことが示されている。
秋田県
- 栄養塩類や懸濁物質の保持に関するデータがなく、また懸濁物質の動きについては海岸の地形や構造物も影響するため評価が困難であるものの、沿岸岩礁域において浮泥の堆積等に起因すると考えられる海藻植生の衰退等が認められる。
- 富山県が北限であった紅藻アヤニシキの小規模な分布が夏季に確認されているほか、九州西岸を分布域とするヒラムチモが冬季に確認されるなど、周年を通して暖海性種が出現している。
- 国では、この小項目での気候変動影響が現れているが、現在、本県では影響は出ていない。
将来生じる可能がある気候変動影響
全国
- 生態系サービスへの気候変動による影響予測についての研究を対象に行われたレビューによれば、対象とした研究のうち約 60%において、気候変動による生態系サービスへの負の影響が予測されている。
- 北海道天塩川流域において、気候変動に伴い河川への窒素やリン等の栄養塩の流入量の増加が予測されている。
- 国内のサンゴ礁がもたらす生態系サービスについて、年間あたり、観光・レクリエーション価値として 2399 億円、漁業(商業用海産物)価値として 107 億円、海岸防護機能として、75.2~839 億円とする試算があり、気候変動に伴うサンゴの生息適域の減少に関する予測を考慮すると、これらの生態系サービスが減少あるいは消失する可能性が考えられる。
- 白化や海洋酸性化によるサンゴ礁へのストレスは、海面水位の上昇へのサンゴ礁の追従を妨げることに加え、サンゴの死滅による海底面の摩擦効果の減少を引き起こし、これらの複合作用の結果としてサンゴ礁による防波機能に深刻な影響が生じる可能性がある。
秋田県
- 降水の頻度が極端に高まると、沿岸域への懸濁物質の放出がさらに増大するため、植生や定着性の動物相への悪影響が拡大する可能性が懸念される。
- 水温上昇傾向が持続すれば、海藻種組成の変化等を通して生態系に大きな変化を与えることが想定される。
- 国では、この小項目において、気候変動による影響が将来予測されているものの、本県では、影響が予測されない。
気候変動適応対策
現在の影響に対する既存施策の実施状況
- 浮泥等堆積物の除去による植生等の回復などに関する小規模な調査を実施するなど、対応策の検討を開始した。
- 現状では、暖海性海藻の出現が生態系に大きな影響を与えているとは考えていないが、最新の知見を参考とした監視が必要である。
将来の影響に対する対応方針
- 栄養塩や浮泥の供給量の変化が沿岸生態系に及ぼす影響について調査を進めると共に、最新の知見を参考とした監視や対応策の検討が必要と考えている。
- 最新の知見を参考とした監視や対応策の検討が必要と考えている。