影響

これまで生じている気候変動影響

全国

  • 既往降雨データの分析によると、比較的多頻度の大雨事象については、その発生頻度が経年的に増加傾向にあり、年超過確率1/5や1/10の、短時間に集中する降雨の強度が過去50年間で有意に増大してきている。
  • これまでの下水道整備により達成された水害に対する安全度は、現在気候を前提にした場合でも、計画上の目標に対して相当不足している。
  • 水害被害額に占める内水氾濫による被害額の割合(2005~2012 年の平均値)は、全国では約40%であり、大都市を抱える東京、愛知、大坂、福岡ではそれを上回る割合となった。
  • このような短時間に集中する降雨の頻度及び強度の増加は、浸水対策の達成レベルが低い都市部における近年の内水被害の頻発に寄与している可能性がある。平成30年7月豪雨においては、地球温暖化に伴う水蒸気量の増加の寄与もあったとされており、内水氾濫による床上浸水、床下浸水の被害の約 9 割が下水道の排水施設の整備が途上である地区で発生したことが報告されている。

秋田県

  • 年超過確率1/5規模を上回る極端な降雨が原因となった影響は、今のところ顕在化していない。

将来生じる可能がある気候変動影響

全国

  • 線状降水帯や地形性強雨などの組織化された強雨については、気候変動影響評価が進んできている。さらに局所的な、単一の積乱雲(スーパーセルなど)により都市の内水氾濫を生じさせるような強雨の表現は、近畿地方における 8月の短時間強雨生起頻度が増加するメカニズムを解析した研究例もある。
  • RCP8.5シナリオを用いて埼玉県における内水氾濫の将来予測を行った結果、現行計画の年超過確率1/5規模の降雨に対応した下水道を整備した場合でも、21世紀末では内水浸水範囲の拡大及び内水浸水深が増加し、内水氾濫により浸水の影響を受けることが想定される人口も増加する可能性が示唆された。一方、将来の人口変動を考慮した場合は、人口減少の影響が大きく、現在人口条件の場合と比べて浸水リスク人口が減少する可能性が示されている。
  • RCP8.5に対応するシナリオを前提とし、日本全国における内水災害被害額の期待値を推算した研究では、2080~2099年において被害額が現在気候の約2倍に増加することを示している。
  • 河川や海岸等の近くの低平地等では、河川水位が上昇する頻度の増加や海面水位の上昇によって、下水道等から雨水を排水しづらくなることによる内水氾濫の可能性が増え、浸水時間の長期化を招くと想定される。
  • 都市部には、特有の氾濫・浸水に対する脆弱性が存在するため、短時間集中降雨が気候変動影響により増大し、そこに海面水位の上昇が重なれば、その影響は大きい。
  • 大雨の増加は、都市部以外に農地等への浸水被害等をもたらすことも想定される。

秋田県

  • 現行計画の年超過確率1/5規模の降雨に対応した下水道を整備した場合でも、21世紀末では内水浸水範囲の拡大及び内水浸水深が増加し、内水氾濫により浸水の影響を受けることが想定される規模も増加する可能性がある。
  • 河川近くの低平地等では、河川水位が上昇する頻度の増加によって、下水道等から雨水を排水しづらくなることにより、内水氾濫の可能性が増加し、浸水時間の長期化を招くと想定される。

気候変動適応対策

現在の影響に対する既存施策の実施状況

  • 令和2年度に国土交通省による雄物川水系流域治水プロジェクトに治水対策が位置付けられ、令和3年~7年度にかけて整備事業を進める計画。

将来の影響に対する対応方針

  • 現在の影響に対する既存施策の実施状況と同様。