10年後の秋田県の環境のすがた

広大な県土と豊かな自然に恵まれた環境を持つ秋田県の環境の現状は、自然環境や大気、水質をはじめとした生活環境ともに、おおむね良好に維持されているといえます。しかし、国内外の動向に目を向けると、気候変動やプラスチックごみによる海洋汚染、生物多様性の損失など、地球規模の環境問題が顕在しています。また、秋田県には、人口減少や少子高齢化を克服しなければならない課題もあります。

この豊かな水と緑あふれる私たちの暮らす地域を将来につなぎ、残していくため、いまから10年後、2030(令和12年)の「秋田県のすがた」をイメージしてみました。

豊かな自然に恵まれた環境が守られた秋田県で、農林水産資源や観光資源、エネルギー資源など、豊富で多彩な自然資源の循環・活用が進んだ持続可能な社会で暮らしています。

イラスト:2030(令和12年)の「秋田県のすがた」のイメージ

  • 森林、河川・湖沼、海岸など多彩な自然環境の中、そこに息づく多様な動植物と共に暮らしています。私たちは、自然に負担をかけない行動を心がけ、自然からもたらされる恩恵を受け取りながら、心豊かに日々の暮らしを送っています。
  • 自然公園都市公園など、緑が身近に感じられる場で自然とふれあいながら、自然と調和した活動を行っています。
  • 地域住民が協働して農地などを保全し、県民のみんなが参加した森づくりや沿岸域の保全によって、農山漁村の多面的機能が維持されています。さらに、地域の農林水産資源やエネルギー資源を最大限に活用した自立・分散型の持続可能な地域づくりが進められています。
  • 「エシカル消費」が定着し、「食品ロス」を減らす取り組みが実践されています。プラスチックの資源循環、廃棄物の「3R」や適正処理が進められています。
  • 環境問題を意識し、これまでの暮らしをどのように変えられるかを考えて、こまめに省エネを行っています。また、再生可能エネルギーを導入するなどして、天然資源の消費の抑制や、温室効果ガスの削減が積極的に取り組まれています。
  • 県民、事業者、民間団体、行政など全ての主体が積極的に環境保全活動に参画し、パートナーシップによる取り組みが推進されています。

いかがでしょうか? 地域の大切な資源を守りながら、私たちが心も豊かに暮らす「豊かな水と緑あふれる秋田」の姿が目に浮かびませんか?

ポイント

秋田県民と事業者を対象に実施した環境に関するアンケート調査(2020(令和2)年実施)では、秋田県の環境の将来像として、「良好な大気や水環境が維持され、豊かな自然環境と多様な生物が保全された“豊かな水と緑あふれる秋田”が継承されている」が、最も多く望まれている結果となっています。

目指すべき環境像と秋田県の基本方針

世界は、地球規模の環境危機にあります。国連のSDGs(持続可能な開発目標)パリ協定の採択など、脱炭素化社会持続可能な社会の実現に向けた動きが活発化しています。わが国の「第五次環境基本計画」では、持続可能な地域づくり「地域循環共生圏」の考え方が示されています。

これからの秋田県における環境施策は、これまでの取り組みに加え、SDGs地域循環共生圏の考え方をとり入れること、また、秋田県が抱える人口減少、高齢化社会にも対応した環境施策を計画することで、環境・経済・社会の統合的な向上を目指す必要があるのです。そして、これらを実現するためには、県民、事業者、民間団体、行政の各主体のパートナーシップによる環境施策への取り組みが重要になってきます。

図:4つの基本方針(1.自然と人との共生可能な社会の構築、2.環境への負荷の少ない循環を基調とした社会の形成、3.地球環境保全への積極的な取り組み、4.環境保全に向けての全ての主体の参加)が目指すべき環境像を実現するために重要になってくる。

※秋田県が目指す将来の環境像を実現するための基本方針については、第2次計画で掲げた重要プロジェクトの進捗状況や県民・事業者を対象とした環境に関するアンケート調査の結果を踏まえて定めました。

知っているようで知らない? 「いまの秋田県」のすがた

10年後の「豊かな水と緑あふれる秋田」のすがたを思い描いてみました。それでは、そもそも「いまの秋田県」のすがたとは、どのようなものでしょう。

地形や気候、環境などの「自然特性」と、人口や経済、水利用、エネルギーなどの「社会特性」に分けて、見ていきましょう。

1.自然特性

(1)地形

田県の総面積(約11,638平方キロメートル)は、全国第6位の広さです。県土には、米代川・雄物川・子吉川の三大河川をはじめ、352もの河川が走り、各地に水の恵みを与えています。田沢湖は全国一の水深を誇り、十和田湖は2重のカルデラ湖として有名です。また、八郎湖は、国営八郎潟干拓事業により残存した淡水湖です。

沿岸部の中央には寒風山などの火山を擁する男鹿半島が雄大な造形美を誇り、その南北は長大な海浜が緩やかな海岸線を形成しています。

(2)気候・気象

秋田県の大部分は、日本海型の冷温帯気候に属し、全域が積雪寒冷地域および豪雪地帯に指定されている日本有数の多雪地帯です。特に、森吉山周辺および平鹿・雄勝地方が降雪の多い地域として知られており、地形などの影響で県北部の積雪量が少なく、県南部で多くなっています。

対馬暖流の影響を強く受ける八森海岸(八峰町)、男鹿半島、由利本荘地域など沿岸部は冬季でも比較的温暖ですが、内陸部では奥羽山脈沿いほど気温が低く寒暖差が大きいのが特徴です。

秋田県の年平均気温は11度、年平均降水量は1,800mm前後。山沿いでは平地より雨量が多く、特に白神山地、森吉山、鳥海山、丁岳山地などが降水量の多い地域となっています。

(3)環境

秋田県は、山岳地などの変化に富んだ地形や湿潤な気候風土を有する、豊かな自然環境に恵まれています。

県土の70%を占める森林の50%は、針葉樹林を中心とした人工林(大半がスギ)です。1993(平成5)年に世界遺産に登録された青森県にまたがる「白神山地」は、優れた原生状態が保存された広大なブナ林を擁しています。動植物の多様性がみられる世界的にも特異な森林です。

秋田県の東部県境には奥羽山脈と那須火山脈が縦走。「八幡平」「駒ケ岳」「栗駒山」の諸火山と、「田沢湖」「十和田湖」の2つのカルデラ湖が形成されています。

日本海岸に沿った「出羽山地」には、鳥海火山脈が重走し、美しい裾をひく主峰「鳥海山」の山容は、出羽富士とも称されています。また、鳥海山を源とする湧水は、多様な動植物の生態系の基盤を形成しているほか、サケが遡上する河川や森林の栄養を豊富に含んだ湧水は、海でとれる岩ガキなど地域の漁業を支えています。

河川は、県北に「米代川」、中央に「雄物川」があり、源を奥羽山脈に発して西に流れ、出羽山地を横断して日本海に注いでいます。米代川は、鹿角盆地・大館盆地・能代平野を、雄物川は、横手盆地・秋田平野を開きます。県南の鳥海山に発する「子吉川」は、下流に本荘平野を開きます。それぞれの河川の肥沃な盆地や平野部には、多くの都市が発展しています。

湖沼は、三大湖沼「十和田湖」「田沢湖」「八郎湖」のほか、大小さまざまな沼やため池があります。平鹿・仙北地域などの扇状地に多く分布する湧水地帯には、希少なトミヨ属雄物型水生植物が生息・生育する貴重な生態系が形成されています。

秋田県の西側は日本海に面しており、沿岸には暖流の対馬海流が北上しているため、緯度のわりには温暖な気候です。そのため、南方系の生物が由利地域や男鹿半島、岩館海岸に線状に分布しています。日本海に突出している男鹿半島西側一帯、および北部の岩館海岸、南部の象潟海岸には、自然性の高い岩礁海岸が発達し、海岸岩礁性のさまざまな生物群が分布しています。県内の海岸線にはサンゴ礁や干潟は存在しませんが、男鹿、八森、象潟の岩礁海岸の地先には、さまざまなタイプの藻場が分布し、特にホンダワラ類を主体とするガラモ場はハタハタの産卵場として不可欠な存在です。

図:秋田県の地勢図

2.社会特性

(1)人口

2019(令和元)年10月現在の秋田県の人口は、96.6万人。1956(昭和31)年の135万人をピークに減少に転じ、2017(平成29)年には100万人を割り込みました。出生数の減少と高齢化に伴う死亡数の増加による自然減が年々増加していることに加え、進学や就職などによる県外への転出者数が県内への転入者数を上回る社会減が続いており、人口は減少に歯止めがかからない状況です。

また、総人口の年齢3区分別の割合は、年少人口(0~14歳)は9.8%、生産年齢人口(15~64歳)は52.5%、老年人口(65歳以上)は37.7%です。生産年齢人口が減少し、高齢化が進行する状況で、将来的な労働力不足が生じるおそれが懸念されます。

2018(平成30)年推計の「日本の地域別将来推計人口(※)」)によると、2045(令和27)年の秋田県の総人口は60.2万人。現在よりも約36万人減少すると推計されています。この減少率は全国で最も大きいものです。年齢3区分別の割合は、年少人口が7.4%、生産年齢人口が42.5%と全国で最も少ない割合です。一方、老年人口は50.1%、このうち75歳以上の人口は31.9%で、いずれも全国で最も高い割合です。

(※)「日本の地域別将来推計人口(2018(平成30)年推計) 2015(平成27)年~2045(令和27)年」(平成30年 国立社会保障・人口問題研究所)

ポイント

秋田県の人口は、全国のすう勢を上回るペースで人口減少、少子高齢化が進み、長期的には労働人口の減少と労働力不足による経済への影響が懸念されます。また、人口減少による過疎化地域の拡大や農林水産漁業の担い手不足による耕作放棄地の増加、森林・沿岸域の適正管理がなされない状況などが生じ、環境への悪影響も懸念されているのです。

(2)土地利用

2016(平成28)年の土地利用状況は、森林が72.4%、次いで農用地が12.8%。1995(平成7)年以降、利用区分の構成に大きな変化はありませんが、農用地が減少している状況です。

(3)経済・産業

産業構造

2017(平成29)年度の県内総生産は、356百億円です。産業別内訳は、第1次産業が3.2%、第2次産業が24.2%、第3次産業が72.4%となっています。第1次産業は、ほぼ横ばいで、第2次産業と第3次産業は、2008(平成20)年度以降リーマンショックの影響などで生産額は減少傾向にありましたが、2013(平成25)年度からは回復傾向がみられています。

就業者数

2015(平成27)年の就業者数は、483千人で、これは県内総人口の47.6%です。就業者数の推移は減少傾向にあり、2000(平成12)年からは全ての産業で減少しています。産業別就業者数の割合では、農業人口が大部分を占める第一次産業が9.8%と全国(4.0%)に比べ大きな割合を占めています。

(4)水利用

県内の水利用として、2018(平成30)年度の県内の上水道・簡易水道の実績年間給水量は105,942千平方メートル。1999(平成11)年頃をピークに減少傾向となっています。

水道普及率は91.7%で、年々上昇傾向にありますが、全国(98.0%)に比べると低くなっています。普及率が低い地域では、地下水や湧水に恵まれ、井戸などへの依存傾向が強く見受けられます。

上水道・簡易水道の年間取水量は129,658千平方メートル。水源別では、表流水54.4%、浅井戸16.0%、ダム放流6.9%、湧水他6.7%など。上水道の年間給水量(有収水量)は87,340千平方メートル。用途別では、生活用が多く、次いで業務用・営業用、工場用など。日常生活における利用が大部分を占めています。

秋田工業用水事業では、2018(平成30)年度に1日当り157千平方メートルの工業用水を秋田市の秋田湾区域(飯島・向浜地区)、御所野地区へ供給しています。

(5)エネルギー

2018(平成30)年度の県内のエネルギー消費量は、110,361テラジュール(TJ)。県民一人当たりのエネルギー消費量は110.3ギガジュール(GJ)です。2015(平成27)年度と比較して、県内のエネルギー消費量、県民一人当たりのエネルギー消費量ともに増加傾向にあります。

2018(平成30)年に策定した「第2次秋田県地球温暖化対策推進計画」に基づき進めている新エネルギーの導入状況をみると、設備容量では風力発電が最も多く、次いで水力発電、太陽光発電が多く導入されています。また、バイオマス熱利用も進められています。

イラスト:風力発電