~将来、秋田のあるべきすがた(環境像)を実現するために~

今日の環境問題は、私たちの日常の暮らしや経済活動と密接に関わっています。そして、私たち一人一人が、その原因の一端を担っていることを強く意識したいものです。

秋田の将来にあるべき環境像を実現するためには、行政機関だけではなく、県民、事業者、民間団体など全ての主体がパートナーシップを持ち、それぞれ主体が期待される役割を明確にし、自主的・積極的に環境保全に取り組む必要があります。

以下では、こちらのページで示した秋田県が目指す将来の環境像を実現するための基本方針4項目ごとに、私たちが果たすべき役割と行動指針について、「SDGsとの関係」を加えながら見ていきましょう。

1.自然と人との共生可能な社会の構築

秋田県の豊かな自然環境は、生物の多様性や私たちの暮らしに大きな役割を果たしています。全ての人々が豊かな自然環境の恩恵を受けるとともに、環境の保全と改善に協力することで、自然環境を良好な状態で将来に受け継いでいく責任があります。そのため、自然環境が、生物多様性の保全や私たちの暮らしに大きな役割を果たしていることを認識し、多様な自然環境と野生動植物の生息・生育環境を確保し、野生鳥獣の適切な保護・管理を行うことで、自然と人との共生可能な社会を築くことが大切です。

【関連するSDGsゴール】
6.安全な水とトイレを世界中に11.住み続けられるまちづくりを13.気候変動に具体的な対策を14.海の豊かさを守ろう15.陸の豊かさも守ろう

(1)多様な生態系の保全

現状と課題

秋田県は、日本海と奥羽山脈に囲まれた約11,638平方キロメートルにおよぶ県土を有しており、そこには多様な生態系が形成され、多種多様な動植物がみられます。この多様な生態系は、私たちの暮らしにさまざまな恩恵をもたらしています。

多様な生態系」は、野生動植物の生息・生育場となっているほか、私たちが暮らしの中で利用している水、食料、木材、繊維なども供給してくれます。私たちが生きていくために必要なほとんどのものが自然からの恩恵であり、生活をより豊かで安全なものとしてくれています。

人間活動との関わりで維持・形成されてきた里地里山や耕地などの生態系は、秋田県が抱えている人口減少や高齢化がさらに進むと、地域の集落機能の低下や担い手不足などを招きます。そして、荒廃した里山林や放棄された耕作地が増加することによる機能低下につながってしまいます。

多様な生態系を守る視点から、それぞれの生態系にある課題を改善・解消するための取り組みを進める必要があります。

取り組みの方向性

重要地域の保全および管理
  • 国が指定する白神山地自然環境保全地域、秋田県内の各所に点在する県自然環境保全地域鳥獣保護区国立、国定、県立自然公園等については、保全対象に応じた規制や適切な管理を行うなど、関係機関との連携・協力により、重要地域の保全に向けた総合的な取り組みを進めます。
  • 新たに生物多様性にとって重要な地域が確認された場合は、保全上必要な対策や管理水準を検討し、県は、新規地域指定や指定地域の見直しを行います。
生態系の保全
  • 森林、河川・湖沼、沿岸域など、生物多様性の保全上重要な役割を果たす生態系について、森林の適切な維持・管理、河川・湖沼の水質の維持・改善、沿岸域の良好な環境を保つための海岸漂着物対策など、生態系の保全に必要な対策を推進します。
  • 自然再生促進法の枠組みを活用し、過去の開発行為などにより失われた自然環境の再生事業を推進します。
  • 草地生態系を形成するススキなどの半自然草原(二次草原)の多くは、近年の牧畜業の衰退や人為的干渉の減少に伴い面積を大幅に減少させており、その維持・管理方法の確立を図ります。
  • 里地里山においては、集落周辺でツキノワグマなどの野生動物の出没が増加しており、人身事故や農作物被害が問題となっています。このため、地域住民などと連携し、人と野生動物との棲み分けを図りながら共存していくための対策を推進します。
  • 高齢化や担い手不足による耕作放棄地が増えることにより、耕地のもつ生態系が維持されなくなることや、特定の野生動物の生息域拡大による農作物への被害が確認されています。土地管理者、地域住民、民間団体、行政などとのパートナーシップによる耕作放棄地の減少に向けた取り組みや農地周辺の環境整備などの取り組みを推進します。
  • 都市においては、自然と人とが共生できる県土づくりの一環として、身近な緑とオープンスペースを保全・創出する観点から都市公園等の整備を推進します。併せて、県民、事業者、環境団体、行政などの多様な主体による環境美化活動を通して、環境保全意識を高めます。
  • 環境影響評価(環境アセスメント)の対象となる事業については、適切な環境影響評価手続の実施を通して、野鳥をはじめとする動物全般の生息環境への影響を回避、または極力低減するよう、開発事業者に求めます。併せて、地域住民、研究者、自然保護団体などの利害関係者との協議、積極的な情報交換・公開を行い、地域との合意形成を図るよう要請することで、生物多様性の確保が図られるよう努めます。

イラスト:生産者、動物、微生物の説明

自然景観などの保全
  • 豊かな自然に恵まれた景観やのどかな田園風景を守り、心のなごむ県土を将来に引継ぐため、「秋田県の景観を守る条例」等に基づく規制を守り、適切な指導を行います。
  • 風力発電所等の設置については、開発事業者に対し、環境アセスメントを適切に実施するよう指導し、自然景観に対する影響の回避・低減が図られるよう努めます。
  • 由緒ある史跡や建造物、街並み、天然記念物などを歴史的・文化的遺産として将来に引継ぐため、「文化財保護法」や「秋田県文化財保護条例」に基づき、文化財の指定や歴史的環境の整備と自然環境の保全を推進します。

写真:自然の参道

(2)野生動植物の保護

現状と課題

秋田県は、山地から海岸に至るまで変化に富んだ地形・地質を有しており、湿潤な気候の下で豊かな自然環境に恵まれ、多様な野生動植物が生息・生育しています。

これら動植物は、長い年月を私たちと共存してきていましたが、産業構造の変化やさまざまな開発行為が、野生動植物の生息・生育場である自然環境に大きな影響を及ぼし、中には絶滅の危機に瀕している種も数多く存在しています。

このため、秋田県では2021(令和3)年に生物多様性の保全の総合的指針となる「秋田県生物多様性地域戦略」を策定しました。また、2002(平成14)年には「秋田県の絶滅のおそれのある野生生物2002秋田県版レッドデータブック」を発行しており、生物多様性の保全施策の充実とその重要性の普及啓発に努めています。

私たちの暮らしは、多様な動植物が関わり合いながら形成される自然の恵みによって支えられていますが、その複雑なバランスのもとで形成されている自然環境を保全するためには、一つ一つの種を絶滅から守っていくことが大切です。そして、生物多様性総体の保全施策の充実とその重要性を広く周知される必要があります。さらに、人身・農林被害を多発させているツキノワグマ、近年目撃が増加しているニホンジカやイノシシなどの生態系や農業に脅威を及ぼすおそれのある野生動物を適切に管理することも必要です。

取り組みの方向性

絶滅のおそれのある種の保護
  • 県内の野生動植物の生息・生育状況、分布状況を把握するための調査を進めるとともに、レッドリストの改訂を行い、皆さんに広く周知することで、野生動植物の保護を図ります。
  • 野生動植物の調査・研究を推進するため、人材の育成を図るとともに、関係機関等とのネットワーク化を推進します。
  • 国有林緑の回廊」と鳥獣保護区等との連携による生物回廊(コリドー)の確保を図ります。
  • 生物多様性にとって重要な地域が確認された場合は、県自然環境保全地域の新規指定や指定区域の見直しなどにより、希少な動植物の生息・生育地の保全に努めます。
  • ススキなどの半自然草原(二次草原)の大幅な減少により、そこに依存して生息・生育する生物の減少が進んでいることから、二次草原の維持・管理方法の確立を図ります。
  • 河川、湖沼、湿地の保全を図るため、関係機関、市町村との連携・協力体制の確立を図ります。
  • 砂浜や藻場など海岸の生態系の保全を図り、環境浄化機能の維持・改良多様な生物の生息・生育環境の確保に努めます。
  • 秋田県の野生動植物の分布状況を確認できる「秋田県生物多様性データバンクシステム」については、生態系への配慮や絶滅のおそれのある種の保護を図るために引き続き活用するほか、定期的なデータ更新やシステムの整備・拡充に取り組みます。
野生鳥獣の保護・管理
  • 鳥獣保護管理事業計画を策定し、鳥獣保護思想の普及啓発に努めるとともに、鳥獣保護センターでの保護活動を行うなど、適切な保護管理対策を行います。
  • 鳥獣保護区等の指定や見直しなどにより、野生鳥獣の保護保全対策を行います。
特定鳥獣管理計画に基づく保護管理対策
  • 特定鳥獣管理計画を策定し、特定鳥獣の保護管理対策を推進します。
  • ツキノワグマ、ニホンザルの保護管理に関しては、人身・農林業被害を軽減する対策を講じるとともに、人との共存の実現に向けた適切な保護管理対策を推進します。
  • ニホンジカ、イノシシの保護管理に関しては、農林業被害のほか、森林生態系への影響や人身被害が発生する恐れもあることから、狩猟および有害鳥獣捕獲などによる個体数の増加や生息域拡大の抑制を図ります。
  • ツキノワグマの住宅地や農地周辺等への出没による人身被害を防ぐため、秋田県警察本部や県民からのツキノワグマ目撃情報や野外で活動する際の被害防止対策などをウェブサイト等で情報発信します。
  • 鳥獣保護管理の担い手の確保と育成、捕獲技術の向上、生息環境の管理などの取り組みを推進します。

写真:野生動物(鹿)

(3)外来種への対応

現状と課題

外来種」とは、本来生息・生育する地域から、野生生物の本来の移動能力を越えて、人為によって意図的・非意図的に導入された種をいいます。

外来種は、地域の在来種を捕食したり、生息・生育環境を奪ったりするなどの生態系への影響、毒を持った種にかまれる、さされるなど私たちの生命や身体への影響、さらには、農作物の食害や漁獲対象種の捕食などの農林水産業への影響など、さまざまな問題を引き起こす可能性が考えられるため、国の機関等と連携しながら、外来種の移入防止の啓発や駆除技術の習得に努めています。

外来種による生物相や生態系の悪化、人的被害や農林水産業被害を防止するため、関係機関と連携を図りながら防除等の取り組みを行っていく必要があります。また、ペットや観賞用で持ち込まれた外国産動植物の野生化を防止するため、私たちは、適正管理意識を持つことが大切です。

取り組みの方向性

  • 外来種の移入防止に関する啓発や、駆除技術の普及に努め、郷土の生態系の維持・保全を図ります。また、これら外来種侵入等の情報を広く皆さんに提供し、被害の未然防止や駆除等の迅速化に努めます。
  • 県は、ホームページ等によりペット等の適切な飼育・管理の徹底などの普及啓発に努めます。
  • オオクチバスなどの外来魚については、関係機関と連携・協力により駆除を図るほか、放流やリリース禁止措置等の普及啓発に努めます。

(4)生物多様性の主流化

現状と課題

国家戦略では、生物多様性に関する理解が進んでいないことを課題とし、基本戦略の1番目を「生物多様性を社会に浸透させる」として、「生物多様性の保全と持続可能な利用の重要性が地方自治体、事業者、国民などにとって常識となり、それぞれの意思決定や行動に反映させる」ことを進めるとしています。この生物多様性の保全と持続可能な利用の重要性が県民、事業者、民間団体、行政などのさまざまな主体に広く認識され、それぞれの行動に反映することを「生物多様性の主流化」と呼んでいます。

残念ながら、「生物多様性」という言葉そのものが、まだ十分に浸透していない状況です。「生物多様性の主流化」を浸透させるためには、自然とのふれあいの場などを積極的に提供し、生物多様性の恵みに触れる体験や生物多様性に関する教育の機会を拡大することなどの普及啓発活動が不可欠です。また、これらに関連するNPOやボランティア団体の活動を支援することでネットワークの広がりが期待できるほか、その結びつきの強化が図られます。さらに、生物多様性に関する教育を実践できる指導者の育成、普及啓発活動を行う人材の確保に取り組む必要があります。

取り組みの方向性

  • 生物多様性の主流化」を浸透させるため、自然観察会の開催などの環境教育・環境学習の機会を多く提供します。生物多様性の保全と持続可能な利用の重要性が広く浸透されることが大切です。自然公園等の公園施設の整備等を進め、「自然とのふれあいの場」の増大を図ります。
  • 生物多様性に関する教育を実践できる指導者の育成、普及啓発活動を行う人材の確保に努めるとともに、県民、事業者、民間団体、行政などさまざまな主体とのパートナーシップによる生物多様性の保全の重要性と持続可能な利用の推進に関する普及啓発を行います。

(5)自然とのふれあい推進

現況

秋田県には、「十和田八幡平国立公園」をはじめ、「鳥海」「栗駒」「男鹿」の3つの国定公園と、田沢湖抱返り県立自然公園等の8つの県立自然公園があり、県内の代表的な山岳、渓谷、海岸等の景勝地が自然公園として指定されています。

自然公園の適正な利用と施設管理を充実させるため自然公園管理員を配置し、高山植物の盗採防止や利用者のマナー遵守に向けた啓発、施設の維持管理などを行っています。

また、自然公園の利用者に、自然の大切さなどへの理解を深めてもらうため、自然保護思想の普及啓発と環境学習の場を提供するビジターセンター等を整備しています。さらに、自然公園の利用の増進を図るため、トイレや歩道改修など各種施設の整備や既存施設の維持更新を行っています。

しかしながら、自然公園の利用者は減少傾向にあり、地域の優れた自然の価値と魅力が十分に伝わっていない状況にあります。このため、優れた景観や自然環境の保全を図るとともに、自然とのふれあい活動を促進するために必要な利用環境を整備し、次世代に継承していく必要があります。また、自然とのふれあいの機会を増やすため、各種施設の整備や資料の作成を進め、自然保護に係る人材を育成していくことも必要です。

取り組みの方向性

  • 自然とのふれあいの場となる自然公園の利用を図るため、公園計画に基づき各種施設の整備や既存施設の維持更新を図ります。自然公園の価値や魅力とその利用ルール・マナーを広く伝えるウェブサイトを開設するなど、自然公園の魅力を発信します。
  • 自然とのふれあいを推進するため、ビジターセンターで自然や地理、動植物などの情報をジオラマや動画などで紹介します。自然観察会や自然素材を活用した自然体験学習プログラム等の提供を行うなど環境教育・学習の場として活用します。
  • 自然保護や自然環境の保全意識の醸成や適正利用の促進を図るため、適正利用を働きかける自然公園管理員などの人材の育成に努めます。

(6)「農地」「森林」「沿岸域」の環境保全機能の維持・向上

①農地

現状と課題

農地は、作物を育むだけでなく、独自の生態系を形成し、昆虫類、両生類など身近な生物の生息地となっており、生物多様性の確保など多くの環境保全機能を有しています。また、平野、盆地、山間地に展開する水田は、美しい田園風景を形成し、洪水防止や水源のかん養などの多くの機能を持っています。

一方、担い手である農業就業人口の減少、高齢化などに伴う労働力の低下により、農地の約9割を占める水田面積は減少傾向にあり、耕作放棄地が増加することによる生態系への影響が懸念されています。

また、水田からは地球温暖化の原因となるメタンガスの発生が懸念されるほか、農薬や肥料などの過剰な使用により、生態系への影響も懸念されています。

そのため、GAP※(農業生産工程管理)の取り組みを推進するとともに、農業水利施設の適切な整備・更新など、農地の環境保全機能が十分に発揮できるよう努める必要があります。また、人口減少・少子高齢化が進むなかでも安定した農業を続けられるよう、経営支援や人材育成を図るとともに、農産物の残さや家畜排泄物などのバイオマス化や営農型太陽光発電などを推進し、地域の活性化に貢献する必要があります。

取り組みの方向性
環境保全機能の維持・向上
  • 農地、水路、ため池などは、私たちの身近な自然として生物多様性の保全、確保に貢献しています。農業を行うことを通して、いかに生態系を豊かにしていくのかを考え、環境に配慮した農地整備、環境にも配慮しつつ農産物の安全確保や持続可能な農業につなげるGAPの取り組みを推進します。
  • 農地における生態系や動植物を保護、保全を図るため、有機物施用による土づくりを基本に、農薬や化学肥料の使用量を抑制した環境保全型農業への取り組みを広げるとともに、エコファーマーの確保に向けた取り組みを推進します。
  • 農地の持つ環境保全機能を維持・保全するため、生産基盤の整備にあたっては、生態系等の環境との調和に配慮した事業を推進します。また、親水性、景観、生態系に配慮した、農業水利施設などの周辺整備を推進します。また、都市近郊の農村部では、ビオトープネットワーク化を推進し、生物多様性の保全を図ります。
  • 農業従事者の高齢化や担い手不足などにより、耕作放棄地の増加やため池・水路などの整備が行き届かないことによる生物多様性への影響を低減する取り組みとして、地域住民による整備・保全活動を支援します。事業者、民間団体、行政など多様な主体がさまざまな形で農地の保全に関わり、地域の活性化に貢献するような仕組みづくりに努めます。
資源の活用
  • 農地の循環資源を最大限に活用し環境保全を図るため、家畜排せつ物などを有機質肥料として有効利用するほか、農作物残さや家畜排せつ物を活用したバイオマス発電、農地を活用した太陽光発電、農業用水路を活用した小水力発電など、地域の特性を活かした再生可能エネルギーの利活用を図り、エネルギーの地産地消による地域内循環の仕組みづくりを推進します。
担い手づくりの推進
  • 地域農業を牽引する競争力の高い経営体を育成するため、農地中間管理機構を活用した担い手への農地集積・集約化を促進するなど、経営基盤の強化に向けた総合的なサポートを実施します。また、農業体験を通じて、次世代を担う年齢層への農業と環境に係る教育を推進します。
  • 人口減少下においても農業を持続可能なものとするため、産学官が連携し、ロボットや情報通信技術(ICT)を活用したスマート農業の研究組織を立ち上げ、先端技術の開発に取り組むほか、スマート農業に精通した人材を育成します。

②森林

現状と課題

県土の約7割を有する森林は、木材の生産・販売といった経済的機能のほか、水源のかん養や土砂流出の防止、保健休養などの公益的機能を有しています。また、生物多様性の保全、地球温暖化の防止などさまざまな多面的機能を有しています。これらの環境保全機能等は、森林を持続的に保全・管理することにより、初めて発揮されるものです。

全国屈指のスギ人工林資源量と素材生産量を誇る秋田県は、製材から合板、集成材など各種の木材加工企業が古くから集積する、日本有数の林業・木材産業県ですが、林業従事者は減少傾向にあり、高齢化も進んでいます。

秋田県の豊かな「水と緑」は人々の生活と一体となって、私たちに心の安らぎとゆとりをもたらす「ふるさとの原風景」を育んできました。これらは、先人が守り育て、伝えてきた貴重な財産であるとともに、未来からの預かりものといえます。

近年の飛躍的な社会経済の発展に伴い、生活の利便性が向上する一方で、私たちの周りから、「ふるさとの原風景」は失われてきています。

このため、水源かん養、地球温暖化防止、生物多様性の保全など、森林の有する多面的機能の維持・向上に努める必要があります。これらの大切な機能が持続的に発揮されるよう、将来にわたって森林を整備・保全していくことが重要です。

林業については、植林から伐採までに長い年月を要するため、経済的側面を重視するだけでなく、自然環境を保全する観点からの位置付けも重要です。

さらに、県民、事業者、民間団体などさまざまな主体が積極的に森づくり活動に参加する機会を増やし、県内各地で開催されている森づくり活動の情報を広く発信する必要があります。人口減少・少子高齢化が進む秋田県にあって、今後、土地の管理者による適正な森林の整備・管理が行えず、森林の有する多面的機能が維持できない状況となることが懸念されます。

取り組みの方向性
環境保全機能の維持・向上
  • 水源かん養、地球温暖化防止、生物多様性の保全など、森林の有する多面的機能が高度に発揮できるようにするため、間伐複層林施業天然林施業や保安林の計画的な整備、林種転換による広葉樹林への誘導、森林害虫対策など、適正な整備・保全対策を推進します。また、森林を適正に管理するため、土地の管理者、事業者、地域住民、行政などのパートナーシップによる仕組みづくりを進めます。
  • 間伐促進や林地残林の活用による「オフセット・クレジット(J-クレジット)」への取り組みを進め、森林資源を活かしながら、地球温暖化対策にも貢献します。
  • 地域の林業を活性化し森林整備を加速させるため、「ウッドファーストあきた」による林業・木材産業の成長産業化の実現を目指し、低コストで安定的な丸太の生産・流通体制を整備するとともに、CLTや耐火部材等の新たな木質部材の開発・普及等により県産材の需要拡大を図ります。また、低コスト林業の確立に向け、スギ人工林資源の成熟度の高い地域を主体に高能率生産団地を設置し、路網の整備や林業の機械化を進め、森林整備の加速化を図ります。
多様な主体による森づくりの推進
  • 森林の保全・整備を推進するため、水と緑の森づくり税を活用し、生育の思わしくないスギ人工林の針広混交林化、松林・ナラ林の健全化、里山の再生など環境に配慮した森づくりに努めるとともに、「あきた森づくり活動サポートセンター」の活動を進め、多くの県民が自主的に森づくり活動に参加できる機会を創出し、県民参加型の森づくりを推進します。
  • 市町村が主体となって森林整備を行う森林経営管理制度が円滑に推進できるよう、市町村の取り組みや実施体制を支援します。
  • 「水と緑」の原風景を保全継承するため、森林ボランティア活動の浸透を図ります。
資源の活用
  • 間伐材や低質木などの未利用資源を有効活用した木質バイオマスによる再生可能エネルギーの利活用を図るため、木質バイオマス発電等の施設整備を促進し、エネルギーの地産地消による地域内循環の仕組みづくりに努めます。
  • 特用林産物の生産体制を強化するため、ICT等を活用した栽培技術の開発に取り組み、生産体制の省力化や省人化を図ります。
担い手づくりの推進
  • 秋田林業大学校の充実・強化等により人材育成を図り、林業に携わる若年従事者を確保します。

③沿岸域

現状と課題

秋田県の男鹿、八森、象潟などの岩礁海岸藻場には、小型の海藻類をはじめとしてホンダワラ等の藻場が分布し、アワビやサザエなどが生息する大切な漁場として地域の漁業者に利用されているほか、秋田県の重要な水産資源であるハタハタの産卵場にもなっています。

国際的な環境問題となっている海洋プラスチックごみは、海岸漂着物として秋田県の海岸の良好な景観や環境にも影響を及ぼしており、豊かな生産能力や水質浄化機能を持つ藻場などの消失と同時に、生物多様性の保全への影響が危惧されています。また、人口減少、高齢化が進むなか、漁業者の高齢化や担い手不足など、持続可能な水産業への影響が懸念されます。

なお、秋田県の沿岸域には、多くの陸上風力発電所が建設され、洋上風力発電所の建設も計画されるなど、再生可能エネルギーの導入が進められています。一定規模以上のこれらの事業については、環境アセスメントの手続を適切に進めるよう事業者を指導しています。

沿岸域の整備を進めるにあたっては、藻場、砂浜などの持つ環境保全機能を維持し、生物多様性と良好な海洋環境の保全に配慮した「水産多面的機能発揮対策」を推進する必要があります。また、海岸漂着物に関しては、沿岸域での対策を進めることと、適正に処理されなかったごみが河川等を流下し、海洋へ流出することを防止する必要があります。

取り組みの方向性
環境保全機能の維持・向上
  • 藻場、砂浜などにおける水質浄化機能や多様な生物の生息環境などの環境保全機能が高度に発揮できるようにするため、「水産多面的機能発揮対策」を推進します。
  • 沿岸域の景観や自然環境を保全・回復するため、海岸漂着物等の回収・処理を行う関係者、市町村、民間団体、地域住民など多様な主体の適切な役割分担と連携を確保します。また、内陸で発生するごみの海洋への流出を防止するため、全県を対象とした普及啓発活動を推進します。
  • 地域の漁業を活性化し沿岸域整備を加速させるため、生物多様性と良好な海洋環境の保全に配慮した「資源管理型漁業」、水産資源の管理、増殖場設置、藻場造成、種苗放流などによる「つくり育てる漁業」を推進します。また、豊かな漁場を将来にわたって持続的に維持するため、漁業者が操業中に回収した漂流ごみ等を回収する漁業関係者を支援します。
  • 沿岸域に多く見られる風力発電所の設置事業のうち、一定規模以上のものについては、適切な環境アセスメントの実施を事業者に求めるとともに、地域住民、研究者、自然保護団体等の利害関係者との協議、積極的な情報交換・公開を行い、地域との合意形成を図るよう努めます。
多様な主体による整備の推進
  • 海洋環境保全の意識と環境保全活動の気運を高めるため、地域で行われる漁業体験海岸クリーンアップなどの交流イベントの情報発信を通して、海の豊かさを守る取り組みを推進します。
資源の活用
  • 地域との合意形成に努めながら、陸上・洋上風力発電所など、地域の特性を活かした再生可能エネルギーの導入を図り、エネルギーの地産地消による地域内循環の仕組みづくりを目指します。
  • 水産資源を育む漁場の環境保全、秋田をイメージできる魚介類のブランド化の推進、販路拡大など、地域の特性を活かした水産業の振興を図ります。
担い手づくりの推進
  • 水産振興センター栽培漁業施設の整備を進めるともに、機能の強化を図り、科学的データに基づく資源管理による漁獲量の安定化、施設を教育や研修の場として活用した水産業の担い手の育成に努めます。

2.環境への負荷の少ない循環を基調とした社会の形成

大量生産・大量消費型の社会経済活動は、大量廃棄型の社会を形成し、環境の保全と物質循環を阻害する側面を持ち、今日の複雑化した環境問題と密接に関係しています。この問題を解決するためには、私たちの日常の生活様式を見直し、「3R」を取り入れた環境に優しいライフスタイルへ転換を図り、環境への負荷の少ない循環を基調とした社会(循環型社会)にしていく必要があります。

【関連するSDGsゴール】
2.飢餓をゼロに3.すべての人に健康と福祉を6.安全な水とトイレを世界中に11.住み続けられるまちづくりを12.つくる責任つかう責任13.気候変動に具体的な対策を

廃棄物の発生抑制と循環利用、適正処理の推進

イラスト:循環型社会のイメージ

大量生産・大量消費型の社会経済活動は、大量廃棄の社会を形成し、環境保全と健全な物質循環を阻害する側面をもっています。また、通常の社会経済活動や私たちの日常の活動は、温室効果ガスの排出による地球温暖化、天然資源の枯渇の懸念、大規模な資源採取による自然破壊など、さまざまな環境問題にも密接に関係しています。

世界に目を向けると、経済発展に伴う廃棄物排出量の増大や不適切なごみ処理などが海洋ごみ問題として海洋にまで影響を及ぼしているほか、「世界全体で人の消費向けに生産された食料」のおよそ3分の1が失われたり、廃棄されたりしている「食品のロス」と廃棄が問題となっています。

国では2019(令和元)年5月に「プラスチック資源循環戦略」を策定し、「リデュース等の徹底、効果的・効率的で持続可能なリサイクル、再生材・バイオプラスチックの利用促進」等の記述が盛り込まれました。重点戦略の一つであるリデュース等の徹底の取り組みとして、2019(令和元)年12月に容器包装リサイクル法に基づく省令を改正し、プラスチック製買物袋(レジ袋)有料化が2020(令和2)年7月に施行されました。

秋田県では、2021(令和3)年3月に「食品ロス」に対応した取り組みや海洋プラスチックごみへの対応など新たな取り組みを加えた「第4次秋田県循環型社会推進基本計画」を策定し、廃棄物の減量化に関する目標値を定めるなど、循環型社会の形成と廃棄物の減量、適正処理を総合的かつ計画的に推進します。

(1)「家庭」における環境を意識した行動

家庭における「3R」の取り組みや、「エシカル消費」への理解など、ごみの減量化に関する教育・学習などを通じて、行動につなげていくことが大切です。

3R

「3R」とは、「リデュース=消費する資源を減らす」、「リユース=再使用する」、「リサイクル=再生利用する」の頭文字をとった言葉で、環境配慮・廃棄物対策に関するキーワードとなるものです。

イラスト:3R Reduce Reuse Recycle

Reduce(リデュース=消費する資源を減らす)

具体的には…

  • 買い物には、マイバッグや買い物かごを持参する。
  • 過剰包装を断り、簡易包装を進める。
  • 衣料品は、リフォームするなどして長く使う。
  • 使い捨て商品はなるべく使わず、同じ用途ならリサイクル製品を選ぶ。
  • 詰替え製品など、廃棄する割合の少ない製品を選ぶ。
Reuse(リユース=再使用する)

具体的には…

  • いらなくなった紙は、メモ用紙として使う。
  • リターナブルビンを使用した製品を選ぶ。
  • いらなくなったものは、知人に譲る、バザーやリサイクルマーケットに提供する。
Recycle(リサイクル=再生利用する)

具体的には…

  • 空き缶や空きビン、牛乳パックなどの容器は、資源回収、販売店店頭回収に出す。
  • 市町村の分別収集のルールに従ってごみを排出する。
  • 古新聞、古雑誌、段ボール、古布などは、資源回収などに出す。
  • 生ごみは、生ごみ処理機などを利用し、堆肥として利用する。
  • 集団回収に積極的に参加する。

エシカル消費(倫理的消費)

エシカル消費」とは、「地域の活性化や雇用なども含む、人や社会、環境に配慮した消費行動」のことをいいます。私たちは、ものを買ったり、食べたり、使ったり、日々何らかの消費をして生活しています。買物をするときに「環境にいいもの」を考えて商品を選択すること、そうすれば、企業は「環境にいいもの」の生産・流通を拡大し、ひいては、地球環境の保全にもつながります。私たちの買う・買わないという選択は、社会や環境を変える力を持っています

私たち一人一人が、日々の買い物などを通して、社会的課題に気付き、課題解決のために、自分は何ができるのかを考えてみること、これが、エシカル消費の第一歩です。

イラスト:エシカル消費について

具体的には…

買い物するときに、できること
  • 買い物に袋が必要な場合は、マイバッグを持参する
  • 必要な食品を必要なときに必要な量だけ購入する(食品ロスの削減
  • リサイクル素材を使ったものや省エネ製品など、環境に配慮した商品を購入する
  • 地元の産品(地産地消)や被災地の産品を購入する(被災地支援)
  • 福祉施設で作られた製品を購入する(障害者の自立支援)
  • エシカル消費に関連する認証ラベル・マークのついた商品を購入する
  • ェアトレード商品を購入する
    ※「フェアトレード」とは、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、開発途上国の生産者・労働者の生産力や経済状況の向上を目指す貿易の仕組み
  • 寄付付き商品を購入する、など
買い物以外で、できること
  • 食べ残しを減らす(食品ロスの削減)
  • ストローなど使い捨てプラスチックの使用を減らす
  • マイボトルを持ち歩く
  • 3R」を心がける
  • 省エネや節電につながる行動を実践する、など

現状と課題

秋田県内で2018(平成30)年度に排出された一般廃棄物の量は36.1万トンと、前年度から0.4万トン減少し、減少傾向で推移しています。県民1人1日あたりの排出量は989グラムと全国平均を71グラム上回り、2008(平成20)年度以降、横ばい傾向で推移しています。

ごみ種類別排出量は、可燃ごみ(混合ごみを含む)が76.7%、資源ごみが9.9%などとなっています。

グラフ:県内のごみ排出量の推移 グラフ:平成30年度のごみの種類別排出量

リサイクル率については、15.9%と全国平均を4.0%下回り、2012(平成24)年度以降、リサイクル率が向上しない状況が続いています。

グラフ:リサイクル率

1人1日あたりの一般廃棄物の排出量やリサイクル率が横ばい傾向で推移している現状を踏まえると、これまで以上に「3R」の推進に取り組む必要があります。私たちの日常の生活様式を見直し、必要なものを必要な分だけ購入する、分別を徹底し資源化を心がける、ごみを極力減らすなど、環境に優しいライフスタイルへ転換していく必要があります。

取組の方向性

  • ごみの減量化、資源ごみの効率的なリサイクルのため、各家庭での発生抑制や適切な分別が徹底されるよう「3R」の推進に向けて取り組みます。
  • 「3R」のうち特にリデュース、リユースにあたる2Rを促進するため、マイバッグ・マイボトル持参、詰め替え商品の選択、フリーマーケットやリサイクルショップなどの活用など、環境に優しいライフスタイルへの転換を県民に広く呼びかけ、廃棄物発生や資源消費の抑制に向けた意識を高めます。
  • 必要なものを必要な量だけ買う、環境に配慮した商品を選択することなど、人・社会・環境に配慮した消費行動「エシカル消費」など、日常生活でできる環境配慮行動に取り組みます。
  • 容器包装リサイクル法や家電リサイクル法等に基づく適正なリサイクルに取り組みます。
  • 食品ロス」の発生抑制のため、「食材を確認してからの買い出す」「必要な分量を購入する」「食材の保存方法や食材を無駄なく使い切るよう工夫する」「外食では食べきれる量を注文する」ことなどを意識します。
  • イベントやセミナー等を通じて、食品ロスの現状に関する情報を発信し、食品ロス削減への意識を高めます。
  • 「3R」や適正処理に関する皆さんの理解を深めるため、各種媒体の活用やイベント等の開催などによる普及啓発活動を展開します。
  • ごみの減量化やリサイクルの取り組みを推進するため、市町村等の関係機関と連携・協力し、あらゆる機会を通じて普及啓発活動に取り組みます。また、クリーンアップなどの環境美化活動に取り組みます。
  • 県民、事業者、民間団体、市町村、県が協働して、環境教育を推進します。

(2)「事業活動」における環境を意識した行動

環境に配慮した事業展開に向けた取り組みを進めるとともに、循環型社会ビジネスや未利用資源活用を新規に開拓することが大切です。

現状と課題

事業系一般廃棄物について、2018(平成30)年度の1人1日当たりの事業系ごみ排出量は323.8グラムであり、近年横ばい傾向で推移しています。産業廃棄物について、2018(平成30)年度の排出量は249万トンで、前年度に比べ16.9万トンの減少となっています。

グラフ:事業系一般廃棄物の1人1日当たりの排出量の推移 グラフ:県内の産業廃棄物の排出量の推移

秋田県内での中間処理実績は136万トンで、前年度に比べ45.4万トンの減少となっています。中間処理されたがれき類や木くずは主に建設資材や燃料として再生利用されています。

最終処分については、安定型処分場で1.9万トン、管理型処分場で25.9万トン、合計で27.8万トンが埋め立てられています。このうち、事業者の自社処分量が4万トンと最終処分量の14%、処理業者による処理は18.4万トンと最終処分量の66%程度となっています。

このほか、鉱山保安法適用施設で12.1万トンが最終処分されており、県全体の最終処分量は39.9 万トンとなっています。

グラフ:県内の産業廃棄物の中間処理量の推移 グラフ:県内の産業廃棄物の最終処分量の推移

2015(平成27)年度以降、事業活動から発生する廃棄物の排出量、最終処分量とも横ばいの状況が続いています。廃棄物の排出量や最終処分量は、経済状況や社会情勢に起因するところもありますが、排出事業者に対する指導や研修を行い、再使用や再生利用を促進する施策を強化するとともに、3Rおよび適正処理を総合的に推進する必要があります。

廃棄物処理業全体の優良化や健全化を進めることのほか、環境配慮の取り組みの受け皿となるリサイクル産業を振興し、バイオマスや鉱さい等の未利用資源の有効活用を促進ことが大切です。

取組の方向性

  • 県は、紙ごみなど、リサイクルが容易な廃棄物の分別に関する情報を広く提供します。
  • 県は、優れた3R事例など、3R手法に関する情報を提供します。各事業所にあった環境配慮活動の推進役となる人材を育成し、各事業所における3Rおよび適正処理に係る目標の設定や具体的な取り組みを促進します。
  • 排出事業者は、適正な廃棄物処理に加え、資源循環や温室効果ガス排出量が少ない等の付加価値を持った処理方法を積極的に選択することが大切です。
  • 県は、率先してグリーン購入・グリーン契約に取り組みます。状況や効果について情報を公表することで、民間事業者による取り組みを促します。
  • 県がリサイクル製品を認定し、認定製品が掲載されたリーフレット等の配布や普及啓発事業により、リサイクル製品の製造・販売を促進します。
  • 認定リサイクル製品の普及拡大のため、県の事務・事業において認定リサイクル製品の優先調達に努めるほか、市町村や民間事業者による利用を促進します。
  • 皆さんに県は、建設リサイクル法や自動車リサイクル法に基づくリサイクルが確実に行われるよう、排出事業者や中間処理業者等への指導を徹底します。
  • 皆さんに処理せざるを得ない廃棄物については、優良認定を受けた産業廃棄物処理業者などの確実かつ適切に処理する事業者や、リサイクルを図る事業者を積極的に利用してもらう取り組みを促進します。
  • 皆さんに県は、優良認定を受けた産業廃棄物処理業者を育成するとともに、優良な処理業者へのインセンティブの付与などにより、産業廃棄物処理業全体の健全化や強靱化を図ります。
  • 皆さんに県は、環境配慮を進める事業者の活動を県民に広く周知するため、各種媒体の活用やイベント等の開催などによる普及啓発活動を展開します。
  • 皆さんに産業廃棄物の再使用・再生利用・エネルギー回収施設を県内に整備する事業者を支援します。
  • 皆さんに産業廃棄物の適正処理の推進のため、処理業者の処理状況の確認・指導を強化するとともに、処理基準等の周知徹底を図り、信頼できる優良な処理業者の育成を推進します。
  • 皆さんに主に県北地区で進められてきた金属含有廃棄物やレアメタル等の金属リサイクル、廃プラスチックのマテリアルリサイクルを、県全域で推進します。
  • 皆さんに稲わらやもみ殻、家畜排せつ物、林地残材、下水道汚泥等のバイオマス資源の利活用を促進します。
  • 皆さんに食品製造業や販売業者による食品廃棄物の削減、およびリサイクルの取り組みを推進します。
  • 皆さんに製造業・販売業の事業者、再生利用事業者、農畜水産業者などが連携した食品リサイクルループの認定制度の取得を促進します。

(3)廃棄物処理体制の確保

適正処理のための基盤構築に向けた取り組みや、適正処理を推進することが大切です。

現状と課題

県内の一般廃棄物の処理施設は、2019(令和元)年度末時点で中間処理施設などが37施設(焼却施設:14、粗大ごみ処理施設:9、資源化施設:12、高速堆肥化施設:2)、稼働している最終処分場が36施設あります。また、産業廃棄物の処理施設は、2018(平成30)年度で中間処理施設が276施設、最終処分場が19施設あります。これらの処理施設を管理する市町村、広域市町村圏組合や廃棄物処理事業者への指導や情報提供などにより、廃棄物の適正処理を進めています。

ごみ処理施設の整備については、既存の廃棄物処理施設の機能を維持しつつ有効利用するとともに、施設の機能を効率的に維持しつつ、秋田県の人口減少下にある状況を踏まえ、施設更新などのタイミングを捉えて、持続可能な適正処理の確保に向けた広域化・集約化を進めていくことが必要です。この際には、エネルギー回収による更なる高効率化の検討や、防災拠点としての機能を併せ持つ施設の設置を推進していく必要があります。また、産業廃棄物の処理施設は、地域住民に迷惑な施設と受け取られる傾向があることから、民間事業者による施設整備を基本としつつ、最終処分場等の必要な処理施設については、公共関与により整備を図る必要があります。

依然として不法投棄や不適正処理が発生しているため、監視体制を強化するとともに、排出業者、処理業者に対する指導の徹底と研修の強化などにより適正処理を推進する必要があります。

災害時の廃棄物対策のため、平時から、市町村間や民間廃棄物処理事業者との連携体制を強化する必要があります。

  • 県は、人口減少を踏まえた、ごみ処理施設の計画的な整備を促し、施設更新等のタイミングを捉えて、持続可能な適正処理の確保に向けた広域化・集約化等を推進します。
  • 県は、広域化により施設を集約する場合や、市町村を越えた処理体制の整備が必要な種類の廃棄物については、適切かつ合理的な処理体制を確保するために、地域毎の市町村・組合が連携して処理する体制の構築を推進します。
  • 県は、リサイクルする資源を確保しつつ、家庭系ごみの排出量の削減や、リチウム電池等の混入による廃棄物処理施設での事故防止のため、市町村等における分別収集の品目の増加や、分別の徹底に向けた取り組みを促進します。
  • 県は、県内中小企業の産業廃棄物処理を補完し、適正処理に寄与するため、公共関与による産業廃棄物適正処理を確保するため、秋田県環境保全センターを維持・管理していきます。
  • 県は、適正な廃棄物処理体制の確保のため、廃棄物処理に従事する人材育成の基盤を整備します。
  • 県は、PCB廃棄物については、処分期間内に適正に処理されるよう、「秋田県ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理計画」に基づき保管中、または現在使用中の事業者に対し、指導や情報提供を行います。
  • 県は、廃石綿や石綿含有廃棄物については、法律や国のマニュアル等を遵守して適正に処理されるよう、立入検査などにより排出事業者や処理業者への指導を徹底します。
  • 県は、水銀廃棄物について、「水銀に関する水俣条例」の採択に伴い改正された廃棄物処理法に基づき、排出事業者や処理業者に対し、処理基準の遵守を指導するとともに、市町村による水銀使用製品に係る分別回収を推進するため、市町村に対する情報提供を行います。
  • 各保健所に配置された環境監視員による日常の監視や、スカイパトロール等の監視体制を維持するとともに、市町村、警察、業界団体等との連携を図り、不法投棄の未然防止・早期発見に努めます。
  • 再生利用率が低い廃棄物の中で資源として循環利用できるもの、太陽光発電や風力発電等由来の今後廃棄が増えると見込まれる廃棄物について、効率的な循環利用のための仕組みを構築します。
  • 大規模な自然災害に伴って災害廃棄物が発生した場合に、迅速かつ適正に処理するため「秋田県災害廃棄物処理計画」に基づき、平時から市町村、国および関係団体等との相互協力体制の強化、人材の育成を行います。
  • 災害廃棄物は、県内での処理を基本とし、被災市町村およびその周辺市町村や民間事業者と連携して、災害廃棄物の適切かつ迅速な処理に努めます。また、必要に応じて、関係団体との調整、国や他都道府県と連携した広域処理を進めるとともに、国や他都道府県からの応援を円滑に受け入れ、支援を得ながら災害廃棄物の早期の解消に努めるため、事前の体制整備を整えます。

(4)協働による課題への統合的な取り組み

プラスチックごみ」対策や「食品ロス」対策などの新たな環境課題に対しては、各主体のパートナーシップによる一体的な課題解決に取り組むことが重要です。

現状と課題

ペットボトルなどに代表されるプラスチック製容器は、軽くて丈夫であることなどから、今日の生活様式においては、欠かすことのできないものとなっています。家庭や事業所に係わらず、多くのワンウェイプラスチックが日々使用されており、私たちの多くが環境影響について、意識せずに使用している状況にあります。

プラスチック廃棄物は、不法投棄などにより、河川や海に流出します。これがマイクロプラスチックとなり魚類や海洋生物に取り込まれ、生態系の維持に悪影響を及ぼすことが世界的に懸念されています。

また、家庭における食品残さやスーパー・小売店で販売している弁当や食材については、消費期限切れなどにより、堆肥化等の循環に回らずに、その多くが廃棄物として処分されています。

食品ロス」とは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品のことをいいます。食品ロスを発生させることは、それを生産・製造するために使用した資源やエネルギーを無駄にしてしまうだけではなく、それを処分するために、一般または産業廃棄物として、廃棄物処理施設において、焼却処分されることになり、新たな資源やエネルギーをムダに消費することとなります。

プラスチックごみ対策
  • 廃棄するプラスチックの分別を徹底することで、マテリアルリサイクルケミカルリサイクルを行う資源量の増加を図るほか、焼却せざるを得ないプラスチックは熱回収を行うなど、プラスチック資源の循環利用を促進します。
  • 事業者、市町村と連携・協力して、製造・流通・小売り・消費の各段階でプラスチックのリデュース・リユースの促進、ワンウェイプラスチックなどの使い捨てプラスチック製容器包装・製品の削減の取り組みを推進するほか、生分解性プラスチックバイオプラスチックの導入を推進します。
  • 第3次海岸漂着物等対策推進地域計画に基づき、県民、民間団体、行政等が連携して海洋プラスチックごみの回収および適正処理を推進します。
  • ポイ捨てされたレジ袋や容器包装等は、川を経由して海へ流出することから、ポイ捨て防止のための普及啓発や、地域のクリーンアップなどの環境美化活動を推進します。
食品ロス対策
  • 食品ロス削減推進法に基づき、食品ロス削減推進計画を策定し、消費者、事業者、関係団体、行政等のパートナーシップのもと、削減に向けた取り組みを推進します。
  • 食品関連事業者や消費者等の多様な主体が連携して、食品ロス削減に向けた取り組みを推進します。
  • 食品関連事業者、再生利用事業者、農業者などが一体となり、エコフィードや堆肥を利用し、生産した農畜産物を流通・販売する食品リサイクルループの構築を推進します。
  • フードドライブの実施やフードバンクを行う民間団体の活動を、広く皆さんに周知されることで、食品ロス削減に向けた意識を高めることができます。

大気環境の保全、騒音・振動・悪臭の対策

大気環境を常時監視するとともに、快適な大気環境が維持されるよう発生源対策や普及啓発等を進めます。併せて、日常生活に密着した感覚公害と呼ばれる騒音・振動・悪臭の防止対策を市町村と連携して進めます。

大気環境の保全

現状と課題

大気環境はおおむね良好な状態で推移しています。光化学オキシダント、および微小粒子状物質(PM2.5)環境基準を超えることがありますが、注意報等の発令等が必要な状態にはありません。

しかし、越境大気汚染が懸念されていることから、光化学オキシダントおよびPM2.5に関する注意報の発令等に備え、常時監視体制を維持する必要があります。

また、未だ多くの苦情が寄せられている稲わら等の焼却行為の防止に努めるとともに、石綿含有建築材料が使用されている可能性のある建築物等の解体等工事が今後も増加していくと予想されていることから、アスベスト飛散防止対策を継続する必要があります。

グラフ:大気汚染物質濃度(年平均値)の推移 グラフ:光化学オキシダント濃度(年平均値)の推移

発生源対策
  • ばい煙発生施設を設置している工場・事業場に対する定期的な監視指導を継続します。
  • 大気測定局のデジタル化を推進するなどICTを活用した効率的な監視体制の構築を図ります。
  • 有害大気汚染物質のモニタリングを継続し、実態把握に努めます。
  • 移動発生源対策として、関係機関との連携を図りながら、発生源対策、交通総量抑制対策、交通管理など、総合的かつ計画的な道路交通対策を推進します。
  • エネルギー消費量を大幅に削減できる次世代自動車の積極的な導入を支援し、普及を図ります。
普及啓発
  • 稲わら焼き禁止」の指導、普及啓発を継続するとともに、稲わらの堆肥利用などの地力増強対策を推進します。
  • 自転車、公共機関の利用を推奨するとともに、エコドライブなど、実行可能な大気汚染低減策の普及・啓発を推進します。
アスベスト対策
  • 解体等工事現場の周辺や一般環境中におけるアスベスト濃度の監視を引き続き行うとともに、適切なアスベスト対策が講じられるよう解体等工事に関する監視指導を継続します。

騒音・振動・悪臭等の対策

現状と課題

2019年度(令和元年度)における秋田県内の工場・事業場や建設作業から発生する騒音に対して、騒音規制法に基づく改善勧告や改善命令を行った事例はありませんでした。

「自動車騒音」については、自動車騒音常時監視を実施し、環境基準の達成率は99.7%と全国平均を上回る達成状況となっています。また、秋田空港周辺の「航空機騒音」については、環境基準を達成しています。飲食店や家庭から発生する近隣騒音については、「近隣騒音防止指導指針」に基づき、苦情処理や未然防止に努めています。

自動車騒音および航空機騒音については、現在の達成状況を維持できるように監視を継続する必要があります。また、飲食店営業や家庭生活に伴う近隣騒音をはじめ、建設騒音、工場騒音等についても市町村と連携して指導を継続する必要があります。

「振動」については、例年苦情もほとんどなく、良好な状態が維持されています。
現在の良好な状態を維持できるよう、市町村と連携して監視・指導を実施する必要があります。

「悪臭」については、家庭生活を発生源とする苦情と畜産農業に係る苦情が多くなっています。工場、事業場から発生する悪臭に対しては、必要に応じて市町村と協力し、防止対策を指導しています。

畜産農業における悪臭については、家畜排せつ物の処理などの適切な対策を講じる必要があります。また、生活排水やごみの不適切な取扱いによる悪臭については、家庭生活に起因した悪臭を防止するため、近隣に配慮した生活意識の向上を一層促す必要があります。

取組の方向性
騒音/振動
  • 主要幹線道路や空港周辺などで騒音の監視を継続して実施します。
  • 飲食店営業に伴う深夜騒音や商業宣伝のための拡声器騒音については、使用制限や音量制限などの規制を継続します。
  • 低周波音の実態調査については、市町村と協力し、必要に応じて発生源対策を指導します。
  • 騒音・振動・悪臭の実態把握を継続し、必要に応じて県が管轄する地域に係る規制地域指定の見直しを実施します。
  • 工場、事業場に対しては、市町村と協力し、必要に応じて騒音・振動・悪臭防止対策を指導します。
悪臭
  • 市町村や関係機関と協力して、家畜排せつ物の堆肥化など、適正処理による悪臭防止対策を推進します。
  • 畜産農家等に対して、市町村と連携して悪臭解消の指導と技術支援を行います。

水・土壌環境の保全

(1)水質

県内の河川、湖沼、海域、および地下水の良好な水質を維持するため、水質汚濁防止法や秋田県公害防止条例に基づき、公共用水域地下水の水質監視、工場・事業場の排水の監視指導を行います。また、長期にわたり環境基準が未達成となっている八郎湖については、水質保全計画に基づき、総合的な対策を推進します。

現状と課題
河川

ほとんどの水域で、河川における水質汚濁の指標であるBOD(生物化学酸素要求量)の環境基準を達成しており、良好な状態を維持しています。しかし、河川の下流域では上流から流れ着いたごみが目立つほか、八郎湖に流入する河川では農業排水などを原因とする汚濁がみられます。また、火山性の強酸性温泉などの影響により酸性化して、下流域に影響を与えている河川があります。

グラフ:BOD・COD環境基準達成率の経年変化

河川については、現在の良好な水質を維持するため、生活排水や工場・事業場等の汚濁負荷対策を継続する必要があります。

湖沼

湖沼における水質汚濁の指標であるCOD(化学的酸素要求量)の達成率が40%程度と低く、特に八郎湖、十和田湖および田沢湖では水質の改善が課題となっています。

十和田湖、八郎湖、田沢湖の水質改善には長い期間を要すると考えられるため、関係者と協力しながら息の長い取り組みを継続する必要があります。

八郎湖
八郎湖の水質は、干拓事業が終了した後、徐々に富栄養化が進行し、アオコが大量に発生するなど、水質環境基準が確保されない状況が続いています。このため、県では2007(平成19)年12月に湖沼水質保全特別措置法に基づく指定湖沼の指定を受け、2008(平成20)年3月に「八郎湖に係る湖沼水質保全計画(第1期)」、2020(令和2)年3月に第3期計画を策定し、発生源対策を継続実施するとともに、アオコ対策や湖内浄化対策など各種対策の一層の推進に取り組んでいます。

八郎湖の長期ビジョン

八郎湖の望ましい水環境および流域の状況等に係る将来像として「~恵みや潤いのある“わがみずうみ”~」を長期ビジョンとして掲げ、多くの住民・事業者等の方々と共有を図るとともに、その実現に向けて各種対策を推進し、令和8年度を目途に達成することを目指します。

~恵みや潤いのある“わがみずうみ”~
  1. 農業や漁業など湖にかかわる人々に持続的な恵みをもたらす
  2. 水遊びや遊漁など子どもから大人までが潤いに包まれる
  3. 鳥や魚や植物など多様な生き物が命を育む

グラフ:八郎湖のCOD75%7値の経年変化

十和田湖
秋田県は、青森県と協働し、水質改善とヒメマスの資源量回復に向け行政、事業者および住民が実施すべき取り組みを定めた「十和田湖水質・生態系改善行動指針(2001(平成13)年8月策定、2015(平成27)年3月改定)」に基づき、水質・生態系改善のための取り組みを進めています。

グラフ:十和田湖のCOD(75%7値)の経年変化 グラフ:十和田湖(湖心)の透明度の経年変化

田沢湖
田沢湖の流域は狭く、湖に流入する河川はほとんどありませんが、発電用水や灌がい用水確保のため、1940(昭和15)年から近隣の玉川と先達川の河川水を導入しています。このうち、玉川は上流部にある極めてpHの低い源泉(1.1~1.2)の影響により酸性河川となっており、これを導水した湖では酸性化が進み、固有種であったクニマスをはじめほとんど魚が生息しない酸性湖沼となりました。1970(昭和45)年頃には湖のpHが4.2程度まで低下しましたが、その後、玉川ダムの付属施設として建設された中和処理施設が1989(平成元)年10月に完成し、玉川酸性水の中和処理事業が実施されてから、湖のpHも徐々に回復しています。

このほか、絶滅したと考えられていた「クニマス」が山梨県の西湖で発見されたとの2010(平成22)年12月の報道を機に、地元の仙北市をはじめとして「田沢湖への里帰り」に期待が高まっています。

写真:田沢湖クニマス未来館に展示中のクニマス

グラフ:田沢湖(湖心・0m・年平均値)のpHの経年変化

海域

2005(平成17)年度から2009(平成21)年度までは、対象の13水域すべてで環境基準を達成していましたが、2010(平成22)年度以降は環境基準を達成していない水域があります。

海域については、現在の良好な水質を維持するため、生活排水や工場・事業場等の汚濁負荷対策を継続する必要があります。

地下水

県内の地下水質の状況を把握するため計画的に調査を実施しており、2014(平成26)年度から2018(平成30)年度までの概況調査では、自然由来と考えられるふっ素等の汚染が確認されています。

概況調査で判明した工場排水などの人為的な原因による地下水汚染については、原因者が対策を講じ、改善を図っています。

地下水汚染が確認された地域の監視を継続するほか、新たに汚染が確認された地域においては、汚染原因を把握し必要な対策を講じる必要があります。

取組の方向性
汚染防止対策
  • 公共用水域および地下水の常時監視を継続し、適切な情報提供を行います。
  • 下水道等(公共下水道や農業・漁業集落排水処理施設、合併処理浄化槽など)の整備を推進し、水質の保全に努めます。
  • 公共用水域に排水する工場、事業場などの排水や排水の地下浸透に対して、監視指導を引き続き実施します。
  • 農薬、肥料の適正使用や環境に優しい農法、地域の家畜堆肥利用の推進など「環境保全型農業」を推進し、水質の保全を図ります。
  • 八郎湖に係る湖沼水質保全計画」に基づき、国、市町村、事業者、県民が一体となって八郎湖流域の水質保全対策を推進します。
  • 十和田湖水質・生態系改善行動指針」に基づき、関係者が一体となって十和田湖の水質や生態系の保全対策を推進します。
  • 玉川酸性水中和処理を継続するとともに、田沢湖周辺における水質調査を行い、田沢湖の水質の改善・維持を目指します。
  • 化学物質等による地下水の汚染が確認された地域においては、適切な飲用指導を行うとともに、原因の究明に努めます。
普及啓発
  • 環境保全意識の高揚に努め、生活排水による汚濁負荷の低減を図ります。普及啓発
  • 公共用水域などへの不法投棄を未然に防止する取り組みや清掃運動などを推進します。

(2)水循環

現状と課題

水は、大地への降水が土壌に保水され、表流水や地下水と形を変えながら流下し、湖沼や海域に流入していく過程で大気中に蒸発して再び降水となるという、自然の循環を行っています。そのような循環系の中の河川や湖沼、地下水の水資源が、多様な生態系を支えており、身近にある豊富な水資源からさまざまな恩恵を受け、今日の郷土を築き上げてきました

私たちの生活において水を使用することは、水循環の経路を変え、ダメージを与えることにもつながります。

環境保全上、健全な水循環系を確保するためには、事業者はもとより、県民一人一人が節水を心がけ、水が有限の資源であることを理解することが重要です。

取組の方向性
  • 水源環境機能を持つ森林や農地を保全し、維持・管理を推進します。
  • 河川や湖沼、湿地を保全するとともに、その整備にあたっては、河川等の分断を避けた生態系の維持・回復や自然の水循環機能の保全に配慮します。
  • 浸透設備による雨水の地下還元を図ります。
  • 水の有効利用の促進や節水意識の高揚を図ります。
  • 国土保全や水源かん養に重要な保安林の拡大を図り、複層林や混交林の造成などを推進します。
  • 農業用用排水路への魚道、昇降枡の設置や、ため池の整備にあたっては、水循環や生態系保全に配慮した資材や工法の導入を推進します。
  • ため池等における水辺空間は、住民や子供たちが自然とふれあう場や環境教育の場のひとつであり、親水空間や自然の水循環に配慮した整備を進めます。

イラスト:水循環の概念

(3)土壌環境

現状と課題

秋田県では、土壌汚染対策法に基づき土地の所有者等に対する土壌汚染状況調査の実施を指導しており、2019(令和元)年度末現在、土壌汚染対策法に基づく形質変更時要届出区域を2か所指定しています。また、こうした区域から搬出される汚染土壌が適切に処理されるよう、汚染土壌処理施設に対する定期的な立入検査を実施しています。

これらの土壌汚染対策が適切に講じられるよう有害物質を使用する特定事業場や土地の形質変更において必要となる調査の実施を徹底させる必要があります。

また、鉱山からのカドミウムなどの金属類を含む坑廃水等を主な原因とする汚染農用地が1,891haあり、このうち 97%について恒久対策(客土等)を講じています。汚染のおそれのある地域については、米の出荷前に食品衛生法に準じた検査方法により濃度分析を実施するなど、消費者に安全なコメを提供しています。

汚染農用地のうち、対策が完了していない地域については、恒久対策を講じる必要があります。また、消費者ニーズに対応した「安全・安心な農産物」の生産・流通体制を一層整備する必要があります。

休廃止鉱山のうち、鉱害防止工事実施済鉱山については、今後も工事箇所の機能が維持されているか把握する必要があります。

取組の方向性
  • 土壌汚染対策法の規制内容について普及啓発するとともに、特定事業場の廃止時に土地の使用状況等を確認するなど、必要な手続が執られるよう周知を図ります。
  • 汚染が明らかになった土地については、区域の指定・公示を行い、適切な土地の管理を指導します。
  • 汚染土壌が適切に処理されるよう、汚染土壌処理施設に対する立入検査を継続します。
  • 米に対する細密調査等により重金属に汚染された農用地を特定するとともに、恒久対策を推進します。
  • 休廃止鉱山の調査や下流域の汚染状況の監視を引き続き実施します。
  • 安全・安心な農産物の生産・流通体制の充実を図ります。

化学物質対策の推進

化学物質による人の健康や生態系への影響の防止に努めます。

現状と課題

私たちの身の回りでは、あらゆる分野でさまざまな化学物質が使用されており、その利用によって便利な生活を送っている一方で、製品の製造や使用、廃棄の過程で環境中に排出され、人の健康や生態系に悪影響を及ぼすおそれのあるものもあります。

化学物質は数が膨大で、有害性に関する科学的知見が十分でないことなどから、個別物質を対象とする規制手段では対応が困難となってきています。

このため、化学物質による環境汚染の防止対策では、従来の個別物質を規制する手法に加え、規制・未規制にかかわらず化学物質の排出実態、環境中の濃度を把握し、化学物質が人の健康や生態系などの環境に影響を及ぼすおそれを「環境リスク」として評価し、未然防止の観点から環境リスクを効果的に低減させ、適切に管理するための総合的な対策を講じる必要があります。

また、ダイオキシン類や水銀等による環境汚染の状況について監視を継続し、排出基準の遵守や適切な維持管理の指導を行う必要があります。PCB廃棄物や水銀含有廃棄物等の適正な処理が確実に行われるよう指導を継続する必要があります。

取組の方向性

  • PRTR制度に基づき届出されたデータの活用を図るとともに、情報を分かりやすく提供します。
  • ダイオキシン類や水銀等の規制物質については、法令に基づく発生源の監視・指導を強化して排出量の削減に努め、環境汚染の状況について監視を継続します。
  • PCB廃棄物や水銀含有廃棄物等の適正な処理が確実に行われるよう指導します。
  • 化学物質の地域における排出実態を把握し、化学物質の環境リスク評価に努めます。

3.地球環境保全への積極的な取り組み

地球温暖化による気候変動、プラスチックごみによる海洋汚染などの地球規模の環境問題は、異常気象やこれにより引き起こされた災害、海洋生態系への影響や海岸漂着物による環境汚染など、私たちの身近な環境にもその影響が及んでいます。これらの地球規模の環境問題は、いずれも私たち一人一人の生活や今日の経済・社会システムと深く関わっています。グローバルな課題であると同時に、私たちの生活とも密接に関係するローカルな課題でもあるのです。

将来世代に良好な環境を継承していくためには、私たち一人一人が世界的な環境問題の原因の一端を担っていることを自覚するとともに、これを郷土の問題として意識して、環境に配慮した生活様式への転換や環境保全活動への積極的な参加など、地球環境保全のために積極的に取り組むことが必要です。

【関連するSDGsゴール】
7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに11.住み続けられるまちづくりを12.つくる責任つかう責任13.気候変動に具体的な対策を14.海の豊かさを守ろう15.陸の豊かさを守ろう

(1)気候変動対策の推進

「地球温暖化対策」の推進

2050(令和32)年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボン・ニュートラル」脱炭素社会の実現に向けて、温室効果ガスの排出抑制、省エネルギーの推進、森林等の吸収源対策、フロン類対策など、地球温暖化対策を進めます。

現状と課題

「SDGs」や「パリ協定」の採択後に初めて策定された環境基本計画として、わが国では、2018年(平成30年)4月、「第五次環境基本計画」を策定しました。SDGsの考え方を活用しながら、分野横断的な6つの重点戦略を設定し、「環境・経済・社会の統合的向上」を具体化することを目指すものです。

「環境・経済・社会の統合的向上」の具体化のカギの一つとなるのが、自立・分散型の社会を形成しつつ、近隣地域等と地域資源を補完し支え合う考え方である「地域循環共生圏」です。「地域循環共生圏」は、各地域がその特性を活かした強みを発揮し、地域資源を活かし自立・分散型の社会を形成しつつ、地域の特性に応じて地域資源を補完し支え合いながら、農山漁村も都市も活かすという地域づくりの考え方で、地域でのSDGsの実践を目指すものです。

地域循環共生圏とは
自立分散 相互連携 循環・共生

各地域が自然環境への負荷を極力低減しながら、地域資源(自然・物資・人材・資金)の自立循環を促す。

  • 地産地消、再生エネルギー導入等

不足分を補い合い、近隣地域と連携・共生関係を構築。

【農山漁村】
↓↑自然資源・生態系サービス

【都 市】
市場(資金・人材提供等)

エネルギーなどの資源の循環および自然との共生により持続可能な社会を構築する。

  • 再生可能エネルギー
  • 廃プラスチックの再生等

イラスト:第五次環境基本計画の概要
(出典:第五次環境基本計画の概要 環境省)

秋田県の2016(平成28)年度の温室効果ガスの排出量は10,297千トン-CO2であり、基準年度である2013(平成25)年度と比べ5.3%の減少でした。第2次秋田県地球温暖化対策推進計画では、2030(令和12)年度の削減目標を2013(平成25)年度比26%減としていますが、目標達成に向けて順調に推移しています。

また、2050(令和32)年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボン・ニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すため、さらなる温室効果ガス排出量の削減が求められています。

なお、温室効果ガスの種別構成比を見ると、温暖化係数を勘案して二酸化炭素換算した数値で、二酸化炭素が91.6%、メタンが3.6%、一酸化二窒素が2.9%、代替フロン等が1.9%となっています。

グラフ:温室効果ガス排出量の推移

世界の平均気温が約1℃上昇している中、近年の激甚な気象災害に温暖化が寄与した例が指摘されるなど、具体的な影響が現れ始めており、今後、豪雨災害や猛暑のリスクが更に高まることが予想されていることから、温室効果ガス排出量の更なる削減に向けた取り組みが求められています。

このため、国の方針を踏まえながら、秋田県地球温暖化対策推進計画の見直しを行い、「2050年二酸化炭素排出実質ゼロ」を見据えて進める必要があります。

取り組みの方向性
県民総参加による地球温暖化防止対策
  • ストップ・ザ・温暖化あきた」の実現を目指し、秋田県地球温暖化防止活動推進センターと連携して、地球温暖化防止に対する意識の高揚を図りながら、家庭や事業所における取り組みを推進するなど、県民総参加による地球温暖化防止活動を推進します。
  • 秋田県地球温暖化防止活動推進センターの活動を支援します。
  • 地球温暖化防止に関するイベントやセミナーの開催など、県民、事業者、民間団体、行政などの参画により地球温暖化対策を推進します。
  • 働き方改革、コロナ禍で進んだテレワークや時差出勤など、多様な働き方に対応した省エネの取り組みを推進します。
  • 各種セミナーの開催・支援、IT等を活用し、省エネの取り組みを紹介するなど、県民、事業者への省エネに関する意識向上、省エネ活動の普及・定着を推進していきます。
  • 県や市町村が率先し、再生可能エネルギーの導入、省エネルギー性能の高い設備・機器や次世代自動車(ハイブリッド・電気自動車・燃料電池車・天然ガス自動車)の導入、公共交通機関および自転車利用の推進など、省エネ活動に取り組みます。また、それらの情報を公開することで、県民、事業者の自主的な取り組みの推進を図ります。
省エネルギー対策の推進
  • 家庭では…
    • 「秋田県住生活基本計画」に基づき、長期優良住宅省エネルギー住宅自然エネルギーを使用した住宅の普及を促進します。
    • 家庭で実践できる「エシカル消費」や省エネ活動をウェブサイトやイベントなどで紹介し、環境に配慮した活動を推進します。
  • 事業者は…
    • ISO14001」や「エコアクション21」などの環境マネジメントシステムの導入と省エネルギー診断の受診を促し、事業所における省エネ活動を推進します。
    • 空調や照明機器など、高効率(トップランナー)型機器の導入を促進させるため、高効率機器の費用対効果に対する認識を浸透させるとともに、国の支援制度等を活用し、省エネルギー技術や省エネルギー設備・機器等の普及を推進します。
    • 建築物の新築・改築時等におけるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)などの断熱構造化を促進し、空調や暖房に係るエネルギー使用量を削減します。
    • 配慮したエコドライブの定着を促進させるため、関係する団体と連携し、エコドライブ宣言登録制度の普及を図るとともに、地域や業界単位で活動が拡がるよう取り組みを進めます。
    • ギー消費量を大幅に削減できる次世代自動車の導入を促進させるため、費用対効果に対する認識の浸透を図るとともに、国の支援制度等も活用しながら普及を加速させます。
    • などへ太陽光発電設備、蓄電池、燃料電池など、再生可能エネルギー等の導入を支援します。
省エネ以外の排出抑制対策の推進
  • 代替フロン等対策
    • 二酸化炭素の100倍から1万倍以上の温室効果がある代替フロンに対しては、フロン類使用機器の管理者およびフロン類充填回収業者等への立入検査などを実施し、フロン類が適正に管理、回収されるよう努めます。
    • フロン排出抑制法に基づいた回収・破壊の体制を堅持し、関係機関と協議しながらフロン類の大気への放出を抑制します。
    • 関係機関や関連団体等と連携し、ノンフロンなど地球温暖化係数の低い物質を使用している製品の普及を図ります。
  • 温室効果ガス排出量がより少ない製品・役務の利用
    • 木材は炭素を貯留していることから、木材を製品として利用することは二酸化炭素の排出抑制につながります。「秋田県木材利用促進条例」、「あきた県産材利用推進方針」に基づき、秋田スギなどの県産材をはじめ、木材の利用を推進します。
    • 水田から発生する温室効果ガスの削減を図るため、秋耕、長期中干し、カバークロップ、堆肥の施用、有機農業など、環境保全型農業を推進します。
    • 温室効果ガス排出削減に配慮した物流やサービスの選択を促進します。
  • 低炭素型技術開発等の推進
    • 「第2期秋田県新エネルギー産業戦略」に基づき、県内における水素エネルギーに関する推進体制の構築等を進めます。また、「あきた科学技術振興ビジョン」に基づき、環境・資源・新エネルギー分野に係る産学官が連携した研究開発の支援を進めます。
再生可能エネルギー等の導入の推進
  • 再生可能エネルギー発電の拡大
    • 第2期秋田県新エネルギー産業戦略」「農業水利施設を活用した小水力発電マスタープラン」「木質バイオマス発電の推進に関するガイドライン」に基づき、再生可能エネルギー発電の導入を促進します。
    • 環境アセスメントの対象となる洋上・陸上風力発電事業については、適切な環境アセスメント手続の実施を事業者に求めるとともに、地域関係者との協議等により事業に対する理解を得て、地域住民の生活環境、地域の自然景観や野生生物(特に鳥類)などの自然環境にも配慮するよう指導します。
    • 環境アセスメントの対象となる太陽電池発電所の設置については、適切な環境アセスメント手続の実施を通して、生活環境、自然環境への影響を回避、または極力低減するよう事業者に求めます。また、県有施設、市町村施設、事業場、一般住宅や農業施設への太陽電池発電設備の導入を促進します。
    • 農業水利施設を利用した小水力発電の整備を推進するため、施設管理者への情報提供や技術指導などの支援を行います。
    • 地産地消型エネルギーの利活用、および県内の林業活性化のため、未利用の低質材を燃料とする木質バイオマス発電の導入を推進します。
    • 下水処理で発生するガスの有効活用を進めるとともに、未利用のバイオマス資源について、市町村と連携・協力し、有効活用できるよう取り組みを進めます。
  • 再生可能エネルギーの熱利用の促進
    • 「第3期ふるさと秋田農林水産ビジョン」や関連計画に基づき、公共施設や農業分野等での木質バイオマスの熱利用体制を整備するとともに、ユーザーに安定供給できる体制を構築し、木質バイオマスの利用拡大を図ります。
  • エネルギー高度利用技術の普及
    • コージェネレーション導入を検討する事業者等に対し、先進的な事例、二酸化炭素の削減効果、国等の補助制度などの情報を提供します。
    • 燃料電池は、家庭用の機器(給湯・発電機)が販売されているほか、産業用機器の開発も進められ、総合エネルギー効率が高いことから、機器の費用対効果に対する認識を浸透させるとともに、国の支援制度等を活用し普及を加速させます。
森林の保全・整備による二酸化炭素吸収の促進
  • 二酸化炭素の吸収源として大きな役割を担う森林について、その機能を十分発揮させるため、適切な整備・保全を推進します。また、適切な整備・保全活動が実施されるよう、林業の担い手の確保、森林整備に必要な作業道の整備などの対策を支援します。
  • 県民参加の森林づくりの活動を促進するため、森林ボランティア団体の活動、市町村や森林組合が地域で行う植樹、育樹などの森づくり活動等、森林環境教育活動などの活動を支援します。
沿岸域の保全・整備による二酸化炭素吸収の促進
  • 海洋生物の生息場、水質浄化や二酸化炭素の吸収といった多面的機能を有する藻場や砂浜などの保全・整備を推進します。
環境教育・環境学習の推進
  • 秋田県地球温暖化防止活動推進センターを拠点に地球温暖化防止活動推進員等による環境教育を推進します。

気候変動の影響への適応の推進

気候変動に対しては、温室効果ガスの削減などの緩和策とあわせて、将来予測される影響に対処し、そのリスク被害を回避・軽減するための適応策を推進します。

現状と課題

秋田の平均気温は、100年当り(※)1.5℃の割合で上昇しており、秋田県の気候変動適応計画として位置付けている「秋田県地球温暖化対策推進計画」においては、気温の上昇や「非常に激しい雨」の頻度の増加、降雪量の減少が予測されています。また、地球温暖化の影響が秋田県において、農林水産業や生態系、健康などにも現れています

※統計期間1886(明治19)年~2019(令和元)年

秋田県における地球温暖化の影響例
分野 気候変動により現在影響が現れている影響
農地 豪雨による農地の法面崩落、水路決壊等が発生している。
水稲 生育期間の高温化により、水稲の出穂期の早期化がみられる。登熟期間中、高温に遭遇する恐れが増え、収量・品質の変動が大きくなっている。
大豆 播種期の6月の多照・少雨による土壌水分不足や、7月以降の集中豪雨による湿害など、生育に大きな影響を与えている。
野菜・花き 高温傾向のため、高温耐性を付与した品種の作出や、地域の気候に適合する栽培管理技術の確立が求めらる。
特に花き関係では、盆・彼岸に出荷するための開花調節管理に苦慮している。
果樹 温暖化傾向のため、耐凍性の獲得等の時期が従来と異なってきている。
また、リンゴについては、夏季の高温や強い日射、暖かい秋により、果実表面の日焼けや着色の劣化などが生じ、商品化率の低下が懸念される。
漁業 魚介類によっては、南方種の分布域が拡大し、北方種の減少がみられる。
水道施設 異常出水による流出・浸水や渇水に伴う節水への協力要請、給水制限が発生している。
畜産 気温の上昇により、家畜の熱中症による死亡や草地の干ばつが発生している。
生態系 これまで県内で生息していなかったイノシシが、平成23年度以降目撃され、その目撃件数も増加している。
健康 熱中症により救急搬送される患者数が増加している。

このまま温暖化が進めば、さらに、生態系や健康リスク増大などへの影響が大きく拡大することが予想されています。現在、既に影響が生じている事象に対して優先的に取り組みを進めるとともに、将来的に影響が予測される分野については、段階的に対応していく必要があります。

取り組みの方向性
適応策の普及啓発等
  • 国や関係機関と連携を図りながら、各分野における気候変動がもたらすさまざまな影響と、これに対応する適応策、国や他県の動向等の情報を収集し、県庁内の関係部局や市町村で共有し、それぞれの施策に活かすとともに、気候変動適応に関する情報を広く皆さんに周知します。
災害に強い地域づくり
  • 気候変動に伴う洪水などの水害を未然に防ぎ、また被害の軽減を図るため、堤防整備や河川改修などのハード面の対策を進めるとともに、即効性のある堆積土砂の除去等に取り組みます。
  • 水害等の逃げ遅れを防ぐため、ハザードマップによる普及啓発、避難場所の確保・整備を推進します。
  • 土石流・地すべり等に備え、市町村と連携した警戒避難体制を強化し、治山施設整備等を推進します。
生態系
  • 自然環境保全地域および候補地、鳥獣保護区等を中心とした生態系などのモニタリング調査を行い、秋田県生物多様性データバンクシステムに調査データを蓄積しながら、システムの活用と整備を図ります。
農林水産業
  • 大学等と連携し、農産物の品質低下・減収の防止技術や防除技術等確立・普及させるとともに、新品種の開発にも取り組みます。
  • 海洋環境の変化に対応した漁業生産体制の構築に取り組みます。
健康
  • 熱中症予防のため、予防策や注意点について、ウェブサイトやパンフレット等の多様な媒体を通じて、広く皆さんに周知します。
  • 気候変動による気温上昇により、種々のウイルスを媒介する蚊などの発生時期や生息地域が拡大し、これらのウイルスによる新たな感染症リスクも高まることから、感染症の発生、およびまん延の防止に重点を置いた対策、迅速かつ的確に対応できる体制を整備します。

(2)海洋汚染対策の推進

プラスチックごみを含む廃棄物の発生抑制、適切な処理体制の構築、私たち一人一人の意識向上を通して、プラスチックごみが多く含まれている海洋ごみおよび海岸漂着物による環境汚染の防止を推進します。

現状と課題

近年、海洋に流出する廃プラスチック類や微細なプラスチック類であるマイクロプラスチックが生態系等に与える影響について、地球規模の環境問題として世界的に関心が高まり、国際的な連携の下で取り組むべき喫緊の課題になっています。

秋田県海岸漂着物等の回収処理量の推移
区分/年度 2016
(平成28)
2017
(平成29)
2018
(平成30)
2019
(令和元)
備考
重さ(t) 合計 599 519 588 465
  • 流木や海藻といった自然物が大半を占めている。
  • 人工物の内容は、プラスチック類、ゴム類、発泡スチロール類、紙類等。
内訳
(重量ベース)
人工物 130 134 99 80
自然物 469 334 431 356
不明 0 50 59 29
推積
(平方メートル)
合計 3747 2431 3642 2806
内訳
(推積ベース)
人工物 897 880 505 492
自然物 2849 1306 2727 2126
不明 0 249 409 188

秋田県の海岸には、依然として大量のごみ等が漂着し続け、海岸の景観や環境、地域住民の生活や地域の経済活動に影響をもたらす深刻な問題となっています。2017(平成29)年度に行われた秋田県海岸漂着物調査によると、海岸漂着物のうち人工由来の漂着ごみの約7割がプラスチックであり、プラスチック類が生態系等に与える影響が懸念されています。また、漂流ごみ等が、海洋環境に影響を及ぼすとともに、船舶の航行の障害や漁業操業の支障にもなっています。

これら海洋に流出するごみは、市街地をはじめ、森林、農地等から河川や水路を経由するなどして海域に流出します。洪水や台風等の災害によって流木等が大規模に漂着する場合もあるものの、日常生活に伴って発生するごみが海岸等に漂着することによって生ずるものも多く含まれています。

そのため、沿岸地域のみならず内陸地域を含む全県規模において、県民、事業者、民間団体、関係機関、行政の全ての主体のパートナーシップによるプラスチック類を含む廃棄物の発生抑制、適正な処理による流出の防止、環境美化活動や県民の意識醸成を図る取り組みなどを推進する必要があります。

取り組みの方向性

発生抑制対策
  • 私たちの日常生活に伴って発生した、海岸漂着物となり得るごみの発生抑制に努めることが重要です。私たち一人一人が環境に配慮した消費行動、日常生活における3R行動に取り組み、廃棄物の減量化、適切な分別や処理が定着することが大切です。
  • モニタリング調査を継続し、海岸漂着物の発生状況、原因の把握に努め、効果的な対策を検討するほか、調査結果を公表することで海岸漂着物に対する認識の向上を図ります。
  • 陸域や海域におけるごみの不法投棄・ポイ捨ての防止を図るため、森林、農地、河川、海岸等におけるパトロール等の監視活動、警告看板の設置による、不法投棄・ポイ捨ての未然防止を図り、ごみが不法投棄されにくい地域環境の創出に努めます。
  • 内陸部を含めた県全土において、環境美化活動を積極的に行うことで、発生抑制の呼びかけを進め、広く海岸漂着物に対する意識の醸成を図るよう努めます。
処理体制の構築
  • 海岸管理者、市町村、漁業関係者、事業者、地域住民、民間団体などとのパートナーシップによる漂流ごみや海岸漂着物の円滑な処理体制を構築します。
  • 漂流ごみや海岸漂着物は、広域的な対応が必要となることから、国や他の都道府県と情報を共有し、連携・協力体制を構築します。
  • 日常的に海域を利用する漁業者等の協力を得て、漂流ごみ等の処理の推進を図るよう努めます。
普及啓発の推進
  • 県は、ウェブサイト、イベントなどさまざまな媒体を活用した海岸漂着物等に関する情報の発信を行います。海洋プラスチックごみに関する知識の普及啓発、および環境教育を推進します。

4.環境保全に向けての全ての主体の参加

地球温暖化や海洋プラスチックごみ、生物多様性の損失など、今日の複雑化している環境問題は、私たち一人一人の日常生活や事業活動と深く関わっています。また、人口減少、少子高齢化が進む秋田県においては、環境保全活動や持続可能な地域づくりの担い手不足が懸念されるため、環境教育・環境学習を通じて、環境保全活動や持続可能な地域づくりの担い手となる人材を育成していく必要があります。

環境問題を解決し、秋田県の豊かで美しい自然を保全し、次世代へ継承していくためには、私たち一人一人が意識を変え、持続可能な社会を目指して自発的に行動していくことが必要です。また、行動の輪を広げていくためには、県民、事業者、民間団体などさまざまな主体が環境問題に対する理解を深め、パートナーシップによる環境保全活動や環境教育などを推進していくことが必要です。

【関連するSDGsゴール】
4.質の高い教育をみんなに17.パートナーシップで目標を達成しよう

(1)環境教育、環境学習の推進

環境保全活動の基盤となる環境教育を推進するため、私たちが、幼児期からその発達の段階に応じ、あらゆる場と機会を通じて環境の保全についての理解と関心を深めることができるよう、環境教育、環境学習の推進に必要な施策を講じることが必要です。また、環境教育の推進にあたっては、SDGsの視点が重要であるとともに、秋田県が推進する「ふるさと教育」を踏まえ、持続可能な社会づくりの担い手を育む教育を推進します。

現状と課題

県では、環境教育等促進法に基づき、「秋田県環境教育等に関する行動計画」を2014(平成26)年3月に策定し、環境教育、環境学習を推進しています。

学校では、学校教育共通実践課題として「ふるさと教育の推進」を掲げ、各学校において特色のある教育活動が展開され、地域の自然や文化、先人の知恵や工夫に学び、自分の地域や自然環境に積極的に関わろうとする意欲や態度を育成しています。

今後の環境保全活動をさらに活発にするために、環境に対する関心や持続可能な地域を創ろうとする意欲等の醸成を図る取り組みを一層強化する必要があります。特に、次世代を担う年齢層への環境教育の必要性は高く、その効果も大きいことが考えられることからSDGsの理念に基づく環境教育を推進します。

秋田県において人口減少、少子高齢化が進む中、環境教育にもその影響がみられ、児童生徒数の減少等により、県が実施する環境学習に係る事業への参加校が減少してきているほか、環境教育を担う人材や活動団体の高齢化等により環境保全活動の担い手の減少による地域の環境保全活動の縮小が懸念されています。

取り組みの方向性

環境学習の機会・場づくり
  • 幼児や児童生徒一人一人の環境に対する豊かな感性やふるさとを愛する心を育むよう、地域の特色を生かした教育活動を行い、身近な地域の環境への興味・関心を高めるほか、学校における環境教育においても、民間団体等が提供する教育プログラムや地域の人材を効果的に活用するなど、多様なプログラムを用いて環境学習を推進します。
  • 少年自然の家等をはじめとした社会教育施設や環境関連施設等を環境学習の場として適切に管理しながら有効に活用するほか、環境保全活動に積極的な企業や民間団体の施設についても、環境学習の場として有効に活用します。
  • 人口減少、少子高齢化を踏まえ、環境学習の機会や場を維持するとともに、そこで提供される学習内容の維持・改善に努めます。
  • 幼児や児童生徒の直接体験を重視しつつ、ICT機器を効果的に活用した環境教育、環境学習の推進を図ります。
人材の育成・活用
  • 環境教育の推進役が期待される教職員を対象に、SDGsの視点から体験活動や各教科等へ学びをつなげていけるよう、研修や講習会等への参加の機会づくりを推進します
  • 高齢化などにより減少傾向にある環境保全活動を担う人材の維持・確保に努めます。
  • 環境教育を担う人材のスキルアップを引き続き行っていくとともに、その人材の能力が有効に発揮されるような仕組みづくりを進めます。
教材の整備・活用
  • 児童生徒の発達の段階を考慮しながら、教員が活用しやすい体験的な環境学習プログラムの作成を進めます。
  • 民間団体等の提供する魅力ある環境学習プログラムや教材を広く周知し、活用します。
情報の発信・提供
  • 講師や教材、イベント、体験活動を実施できる施設等の情報など、美の国あきたネットや情報紙等の各種媒体を活用した情報提供を行います。
各主体の連携・協働取り組みの推進
  • 公共の社会教育施設や民間施設等を環境学習の場として活用するほか、それぞれの学習プログラムや教材を相互活用するなど、県、市町村、事業者、民間団体等の各主体のパートナーシップによる取り組みを進めます。

(2)環境に配慮した自主的行動の推進

今日の環境問題は、私たち一人一人の日常生活や事業活動と深く関わっていることを認識し、県民、事業者、民間団体、行政などのパートナーシップにより、環境に配慮した自主的行動を実践するとともに、SDGsの実現にも貢献する地域社会の創造を目指します。

イラスト:目指すべき環境像 豊かな水と緑あふれる秋田

現状と課題

これまでの大量生産、大量消費、大量廃棄を生み出す社会経済システムは、私たちの日常の生活を豊かで快適なものにする一方で、地球温暖化などの地球規模の環境問題の原因にもなっています。もし、このまま地球温暖化が進行すると、気候変動による熱波や大雨の発生が増加し大規模な森林火災や洪水など自然災害のリスクが増加するだけでなく、生態系、食糧、感染症問題など、人類の生存基盤にも大きな影響を及ぼしかねない問題となることが予想されています。

このような現状を県民、事業者、民間団体、行政それぞれが認識し、これまでの社会経済システムやライフスタイルから脱却し、私たち一人一人が自主的・積極的に環境に配慮した行動を実践し、環境に負荷の少ない循環を基調とした持続可能な地域社会に変えていくことが求められています。

内では、こうした問題を直視する県民、民間団体などによってさまざまな環境保全活動が行われていますが、その多くは特定の人や限られた地域での活動にとどまっているのが現状です。

地球温暖化をはじめとした環境問題に対し、経済活動を縮小することなく、SDGsの考え方を取り入れ、持続可能な経済の成長を目指し、県民や事業者などが法律等の規制に従うだけでなく、自主的・積極的に環境に配慮した取り組みを実践する必要があります。

また、環境保全に関する取り組みは、それぞれが独立して行われるのではなく、県民、事業者、民間団体、行政などの全ての主体が、人材や情報を共有し、パートナーシップによる活動を推進し、より一層効果的な活動とする必要があります。さらに、次世代を担う若い世代の参加意欲の増進に向け、楽しく環境保全活動ができる機会の提供などを通じて、活動の裾野を広げていく必要があります。

取り組みの方向性

環境配慮の普及と県の率先行動の推進
  • ウェブサイトなどの媒体を活用し、日常生活や事業活動で実践できる「省エネルギー対策」「エシカル消費」「3Rの推進」「自然保護」などの環境配慮に関する情報を広く皆さんに周知し、日常における自主的、積極的な環境配慮行動の実践を促します。
  • 秋田県地球温暖化防止活動推進センターの支援などを通じて、各主体の連携を推進するとともに、私たち一人一人が率先して環境保全活動を展開する気運を高めます。
  • 環境に配慮した企業経営を促進するため、ISO14001やエコアクション21などの環境マネジメントシステムの導入を促します。
  • 生産や消費における環境負荷の少ない製品や環境に配慮されたサービスを優先的に選択し購入する「グリーン購入」の普及促進を図ります。
  • 公共施設で取り組んでいるESCO事業等の省エネ効果を地域に情報提供することで、皆さんや事業者による省エネ対策の実践を促します。
  • 県は、「あきたエコマネジメントシステム」により、率先して事務・事業における環境配慮を行います。
自主的な環境保全活動への支援
  • 環境美化活動、ごみ減量化・リサイクル運動など、多くの主体が環境保全活動に参加できる実践の機会を提供します。
  • 生物多様性の保全とその持続可能な利用の確保に取り組むための多様な主体による保全活動に対する各種支援を行います。
  • 「あきた森づくり活動サポートセンター」を設置し、相談窓口を開設することにより、皆さんや森林ボランティア団体など多様な主体が森づくり活動に参加できる機会を創出します。
  • 環境保全活動へ多様な主体の参加を促すための環境情報を、利用者ニーズに応じた情報の提供を進めます。
  • 環境保全活動を行うボランティアとNPO団体等との情報共有の支援を行います。
  • 県民、事業者、民間団体、行政などの相互理解とパートナーシップによる環境保全活動を推進するため、環境保全に取り組むさまざまな主体が集まるイベントを開催するなど、異なる立場の人々が交流し、情報を交換できる機会を提供します。
  • 環境保全に関する実践活動が他の模範となる個人または団体を「環境大賞」として表彰し、その活動事例を広く皆さんに紹介することにより、環境保全に関する自主的な取り組みを促進します。
  • 環境保全活動を行う民間団体等へ支援します。

(3)県民、事業者、民間団体、行政等による環境パートナーシップの推進

現状と課題

今日の複雑化する環境問題、また人口減少、少子高齢化などの社会情勢から、環境保全活動を推進し、持続可能な社会を構築するためには、県民、事業者、民間団体、行政のお互いの強みを生かしたパートナーシップを形成していくことが必要です。

しかしながら、秋田県では各主体のパートナーシップによる環境保全活動の実績が少ない現状にあることから、行政と民間団体等がパートナーシップを構築するための支援等が必要です。

特に、過疎化などにより管理の担い手不足が懸念される農山漁村においては、耕作放棄地や間伐の行われない森林の増加など、多様な生態系への影響が懸念され、地縁団体や行政、事業者などによるパートナーシップが必要とされています。

取り組みの方向性

  • 生物多様性の保全とその持続可能な利用の確保に取り組むため、県民、民間団体、行政のパートナーシップによる取り組みを推進します。
  • 「あきた森づくり活動サポートセンター」を設置し、相談窓口を開設することにより、県民や事業者など多様な主体が森づくり活動に参加できる機会を創出します。
  • 環境保全活動へ多様な主体の協働を促すための環境情報の利用者ニーズに応じた提供を進めます。
  • 環境課題に対する解決を図る手段として、多様な主体が対等な立場で協力しあうことで、それぞれの得意分野が生かされた活動の広がりや課題の解決を図るための取り組みを推進します。

5.共通的・基盤的施策の推進

「自然と人との共生可能な社会の構築」「環境への負荷の少ない循環を基調とした社会の形成」「地球環境保全への積極的な取り組み」「環境保全に向けての全ての主体の参加」の4つの基本方針に関わる共通的・基盤的な取り組みの方向性を示します。

(1)環境影響評価の推進

秋田県の豊かな自然環境を保全しつつ、適切な土地利用を図るため、環境アセスメント制度を適正に運用します。

現状と課題

環境影響評価とは、開発事業の内容を決めるにあたって、それが環境にどのような影響を及ぼすかについて、あらかじめ事業者自らが調査・予測・評価を行い、その結果を公表して一般の方々、地方公共団体等から意見を聴き、それらを踏まえて環境の保全の観点からよりよい事業計画を作りあげて行こうとする制度です。

秋田県では、1994(平成6)年に「秋田県環境影響評価に関する要綱」を定めて、環境アセスメント制度を運用してきましたが、2000(平成12)年7月に「秋田県環境影響評価条例」を制定しました。

「秋田県環境影響評価条例」では、「環境影響評価法」との整合を図りつつ、秋田県の地域特性を考慮して、対象事業(廃棄物最終処分場、レクリエーション施設、畜産施設等18種類)等を定めており、現在はその適正な運用に努めています。

規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業については、環境影響評価法および秋田県環境影響評価条例に基づき、適切な手続の実施を通して可能な限り環境保全に配慮する必要があります。

なお、2019(平成31)年4月に施行された「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(通称、再エネ海域利用法)」に基づき、令和2年7月に秋田県の「能代市、三種町および男鹿市沖」と「由利本荘市沖(北側・南側)」が促進区域に指定され、今後、洋上における大規模な風力発電事業の実施が見込まれています。

洋上風力発電所の環境影響については十分に解明されていない点が多く、予測の不確実性を伴うことから、最新の知見の収集等に努める必要があります。

取り組みの方向性

  • 各種事業について、環境アセスメント手続における環境保全についての住民意見や知事意見が事業計画に適切に反映され、その結果、秋田県の良好な環境が保全されるよう事業者の指導に努めます。また、環境アセスメントの実施後においても、報告書手続(事後調査)等を活用し、フォローアップに努めます。
  • 環境問題や国の動向、秋田県における開発事業の状況等を踏まえ、必要に応じて秋田県環境影響評価条例の対象事業や技術指針の見直しについて検討します。
  • 環境アセスメントに関する審査・指導の充実に努めるとともに、必要に応じて、情報の収集や技術的手法の見直しを図ります。

(2)環境監視・測定体制の整備

環境の監視、測定体制の整備により、秋田県の良好な自然環境を保全します。

現状と課題

秋田県は「自然環境保全基礎調査(緑の国勢調査)」などにより県内の動物植物分布状況の把握に努めています。また、地域環境を保全し、住民の健康を守るため、大気汚染や河川・湖沼・海域・地下水の水質汚濁、土壌汚染などについて、新たな知見による環境基準項目の追加などに対応しながら、県内各地で監視・観測を継続しているほか、大規模な工場と公害防止協定を締結するなど、工場・事業場に対する監視指導に当たっています。

地球環境問題や化学物質等による環境汚染など、将来の郷土を脅かす環境問題を視野に入れ、監視・測定体制の充実に努める必要があります。また、貴重な動植物の不法採取、ごみの不法投棄など、個人のモラル欠如による環境問題が増加しないよう、環境保全意識の啓発と監視体制の強化が必要です。

取り組みの方向性

  • ICTの活用やデジタル化を推進するとともに、環境基準項目の追加や測定方法の見直しなどに応じて、測定機器の整備、測定体制の充実を図ります。
  • 気候変動や化学物質等に関する情報交換に係る国内外のネットワークに参加します。
  • 空間放射線量および放射性物質濃度の測定を継続し、適切な情報提供に努めます。
  • 東北各県などとの連携によるスカイパトロールの実施など、関係機関と連携して廃棄物の不法投棄の防止に努めます。
  • 地域住民の協力を得ながら、自然保護、ごみの不法投棄防止などに対する啓発活動を行うほか、監視体制の充実を図ります。

(3)環境マネジメントシステムの普及・推進

環境に配慮した事業活動やSDGsへの取り組みを推進するため、事業者自らが環境負荷の削減や効率化によるコスト削減などを目指す環境マネジメントシステムの普及・促進を図ります。

現状と課題

環境マネジメントシステムは、従来の公害防止に対する法規制への対応や周辺住民の苦情対策から一歩踏み出し、事業経営全般について環境配慮の要素を取り入れ、環境対策の推進について自らが方針・目的・目標を設定し、期限を定めて、実行・見直し・改善を継続していくものです。このシステムは、環境への負荷低減に極めて有効な手法であるとともに、事業者がSDGsへの取り組みを企業活動に取入れる場合にも活用することができます。

環境マネジメントシステムには、国際規格である「ISO14001」や環境省が普及を進める「エコアクション21」があり、県内でもサービス業や建設業、製造業を中心とした事業者が認証を取得し、環境負荷の低減に取り組んでいます。

環境への負荷を低減し、循環を基調とした社会を形成するためには、事業者自らが環境に配慮する意識を高めていく必要があります。そのためには、「ISO14001」のほか、認証費用等の負担が軽く、中小企業においても、比較的取り組みやすい「エコアクション21」の普及・推進を図る必要があります。

取り組みの方向性

  • 事業者における環境マネジメントシステム導入の推進を図るため、システムに関する情報を県民、事業者等に積極的に提供するとともに、普及や促進に必要な人材育成に取り組みます。
  • 事業者におけるSDGsへの取り組みは、環境問題の解決への貢献が期待されることから、SDGsに関する情報提供やセミナーの開催等により、環境マネジメントシステムの普及啓発を図ります。