秋田エコプラッシュ株式会社 専務取締役 小泉 剛さん

サムネイル:【環境保全活動の取り組み】秋田エコプラッシュ株式会社(YouTubeへ移動します)

毎月1回、能代落合浜を中心に清掃活動に取り組む会社があります。プラスチックごみなどのリサイクル事業を手掛ける秋田エコプラッシュ株式会社(能代市)。「自分の暮らす地域を自分たちで守りたい」と、社員10人ほどで始めた清掃活動の取り組みが共感を呼び、今では多いときで50人ほどが参加するまでに輪を広げています。専務取締役の小泉さんに話を聞きました。

なぜ、海岸の清掃活動を?

写真:海洋プラスチックごみ

当社の事業は、主に家庭から排出されるプラスチックごみを中心に扱うリサイクル事業です。プラスチックは私たちの生活に欠かせない大切なものである一方、適切に処理しないと環境に大きな負荷をかけてしまうものでもあります。最近では、海洋プラスチックごみが大きな問題となっていますが、これが進むと、人の生活自体が成り立たない状況を引き起こしてしまいます。プラスチック処理を行う企業として、このような状況をなんとかできないだろうかと考え、まずは「自分たちのできることをやろうじゃないか」と、2020年5月8日から毎月1回、地元の海岸の清掃を行っています。今はまだ小さな活動ですが、子どもたちが大人になったとき、私たちと同じ生活ができる環境を残せるようにと取り組んでいます。

清掃活動に参加する人が増えているそうですね

写真:海岸の清掃活動

私が言い出しっぺとして先頭を切りながら、当社社員11人と清掃活動を始めました。その後、同じ工業団地にある会社が参加してくださいました。さらに、取引先がほかの会社へ呼び掛けてくれたりして広がっていきました。地元紙が活動を取り上げてくれたときには、記事を読んだという会社も参加してくれました。これまでに一般市民の方も数人いらっしゃいました。今は、40~50人の皆さんと清掃活動に取り組んでいます。大変うれしく思うのは、自分たちの住む地域を自分たちで守ろうとする取り組みに、回を重ねるごとに賛同し、参加してくださる皆さんが増えることなんです。この活動を通して、当社の社員のモチベーションも本当に上がってきていますよ。

海岸のゴミの状況について教えてください

写真:海岸のゴミ

真冬の日本海は天候が厳しいため、冬季の活動は休止しています。そのため、活動を始める3月には多くの漂着ゴミがたまっています。リサイクルのために選別した量だけで130キロほど。実際に拾ったゴミの量はこの数倍あります。プラスチックごみには外国語が印字されたものが非常に多いのですが、海がどれだけ汚れているのかを考えると非常に怖い思いにかられます。

海岸の清掃活動で難しいことは?

写真:分別作業

ゴミを拾うこと自体が、困難なことなんです。捨てられてから月日が経ったプラスチックなどは、経年劣化によって細かく分解されてしまいます。そのため、きれいに除去すること自体が困難になってしまうんです。プラスチックごみを放っておけば、どんどん分解されてしまい、これが海に入りマイクロプラスチックとなって、生態系への悪影響を引き起こし、ひいては私たちの暮らしに大きな問題として降りかかってきます。よく「捨てるのは簡単だが、拾うのは大変」と言われますが、まさにその通りだと思います。プラスチックごみは、形を保っている状態で除去することが大切ですので、まずは、大きいゴミから優先して分解される前に片付けるようにしています。

プラスチックごみはどのようにリサイクルされるのでしょう

写真:プラスチックごみ

まず、海岸で拾ってきたプラスチックごみのうち、当社でリサイクルできるものを選別します。ゴミには、砂などいろいろなものが付着していますので、人の手でゴシゴシと洗います。その後、ゴミを「破砕」した後、さらに「洗浄」しながら「粉砕」します。これを溶かしてフィルターを通し、溶けたものを「ところてん」のように押し出して、粒粒のペレットに変えます。ペレットとほかのリサイクル材を合わせて、射出成形機でもう1度溶かして金型の中に入れると、植木鉢などの製品にリサイクルされます。製品によりますが、海から拾ってきたプラスチックごみの割合が30%ぐらい、家庭から出てきたゴミを含むそのほかのリサイクル材が70%ほどです。

家庭から出るゴミのリサイクルのプロセスの全工程を5分ほどにまとめた動画をYouTubeに掲載しているので、観ていただきたいですね。

リサイクル製造した植木鉢はどのように使われますか?

写真:植木鉢

今はコロナ禍で難しいですが、当社は地元の小学校4年生の社会科見学のコースになっています。市役所の担当者からお聞きしたのですが、子どもたちが見学した後は、家庭ゴミの分別が一時的にしっかりするのだそうです。これはまだ計画段階ですが、植木鉢に園芸用土とバジルの種をセットにして、バジルの育て方と海洋プラスチックごみの現状をまとめた説明書を付けた商品にできないかを検討しています。まずは、子どもたちに配って、バジルを育てながら植木鉢を見て、海洋プラスチックごみの現状について考えるきっかけにならないだろうかと。あとは、当社の取引先や協賛いただいた企業などの販促品として提供できればと考えています。オフィスや家庭でバジルを育てながら、海洋プラスチックごみの状況を認識していただけるようなものにしたいと考えています。

SDGsの推進にもつながりそうです

写真:認証書

そうですね。当社の事業は環境対策そのものですが、二酸化炭素を多く排出しては意味がないですから、環境負荷を与えずにリサイクルを進めていくことが大事です。当社では、9月から、秋田県産の水力発電の電気を使っています。昨年に比べて75%も二酸化炭素の排出を削減することができています。

秋田県のリサイクル製品に認定されている製品もあるとか

写真:雨水貯留槽

認定されているのは、雨水貯留槽のブロック材です。店舗の駐車場などに雨水が貯まるプールのような層を作るためのブロック材。原料は、家庭から出されたプラスチックごみが、ほぼ100%です。ブロックは1個5キロで、年間50万個ほど作りますから2500トンのゴミを使っている計算になります。

秋田の環境に感じていることと、これからの取り組みについて教えてください

写真:清掃活動

山も川も自然がたくさん残っている秋田の環境は、とても素晴らしいと思います。ただ、海については、日本海の冬の風が強いため、太平洋側の地域と異なり、海に行く機会は極端に少ないように思います。そのため、自分たちが住んでいる地域の海が非常に汚れていることに気付いていない人も多いのではと感じます。

海浜清掃はこれからも続けていくつもりですし、まちなかの清掃なども行なっていますが、当社はプラスチックのリサイクルをしている企業ですから、プラスチックで環境悪化が進まないよう考え、行動していかなければなりません。

現在、拾ったプラスチックごみの中のうち当社でリサイクルできるものは、その重量に応じた金額を日本UNEP協会に寄付しています。今後、この活動を大きく広げられれば、当社がゴミを買い取ることで社会貢献につなげられるのではと考えています。

県民の皆さんへメッセージをお願いします

写真:小泉剛さん

自分たちが住む地域は自分たちで守るというのが1番大事だと思います。まずは、今の状況、現実を直視していただいて、そこから取り組める行動に移していただければと思います。

清掃参加者の声(1)

活動は何回目ですか?

写真:参加者へのインタビュー

参加者1・2 私たちは今年に入ってから参加して6回目です。

参加前と比べて変わったことや、活動を通じて環境保全について感じたことは?

写真:参加者の清掃活動

参加者1 海のゴミの多さにびっくりしています。

参加者2 毎回、大きなゴミがいっぱいあって集めているんですけれども、回数を増すごとに少しずつ減っていると思います。ゴミを捨てさせないことや出さないことができれば、(海岸)ゴミは減っていくのかな。海を通して海外からのゴミみたいのもあるので、みんな一人一人が気をつけないと改善しない問題だと思います。

参加者2 ストローやペットボトルのキャップも多いです。キャップは、エコプラッシュで再生してプラスチック製品に改良されますが、ポイポイ捨てないで、ちゃんとゴミ箱に捨てて、海を汚さないようにしてほしいです。プラスチック製品は、海に落ちている物でも再生できるそうですので、皆さんもゴミを拾う活動をしていただければなと思います。

清掃参加者の声(2)

活動は何回目ですか?

参加者3 昨年の春くらいから毎月1回です。

参加前と比べて変わったことや、活動を通じて環境保全について感じたことは?

写真:参加者へのインタビュー2

参加者3 毎月拾っているので、空き缶やペットボトルは少なくなってきたと思います。プラスチックのゴミも落ちているので、少しでも魚もケガのないようになればと思います。

参加者4 だいぶゴミは減りました。毎月拾いに来ていますが、夏前は、ビンやタイヤ、大きいゴミも多かったんですけど、だいたい今の時期は少なくなって、きれいになってきているなと。海を守りたいと思います。