秋田県スキューバダイビング連盟 金澤武さん

サムネイル:【秋田県スキューバダイビング連盟】清掃活動で「母なる海への恩返し」【環境保全活動の取り組み】(YouTubeへ移動します)

ダイビングスポットとして、秋田県内外のスキューバダイバー(以下、ダイバー)に親しまれる男鹿半島で、30年以上にわたり、海岸と海中の清掃活動などを通じた海の環境の保全活動に取り組む団体があります。1988(昭和63)年創設の「秋田県スキューバダイビング連盟」(秋田市)です。会員数は約40名。令和5年度の「環境大賞」で秋田県知事の表彰を受けた、会長の金澤武さんに話を聞きました。

秋田県スキューバダイビング連盟について

写真:男鹿半島が主な活動拠点で男鹿水族館(男鹿市)の従業員向け駐車場を使わせてもらう協定を結んでいる。

ダイバー相互の連絡や協調、ダイビングスポットの確保・継承、ダイビング事故の防止、ダイバーのマナーや社会的地位の向上などを目的に活動しています。男鹿半島を主な活動拠点に、地元の漁協や海上保安部、海上保安協会さんなどと連携しながら、海の清掃活動や海難救助活動などの活動にも取り組んでいます。
もちろん、ダイバーといえども、勝手に海産物を獲ることはできませんので、密猟の誤解を招かないよう当連盟の旗を掲げて潜ったり、観光客の皆さんに迷惑が掛からないよう、男鹿水族館(男鹿市)の従業員向け駐車場を使わせてもらう協定を結んだりするなど、各所とコミュニケーションを取りながら活動しています。

海中の清掃はどのように行うのでしょう

写真:海中のゴミ回収作業

海中のゴミの回収作業は、7、8人のチームで行います。ダイバーが装備する空気ボンベなどの機材は10~20キロになるので、作業は重労働です。ダイバーに通常の潜水よりも負荷がかかることから、空気の量などに注意が必要ですし、波などで海洋環境が急に変わることもあります。それぞれのダイバーの経験値も異なりますので、ベテランをチームのリーダーに据え、独自のマニュアルを作成して、安全を第一に作業しています。
1回の潜水で回収するゴミの量は、45リットルのゴミ袋で4袋ほどです。また、ダイバーが持ち上げることのできない大きなゴミは、写真を撮影し、リフトバックなどの専門機具で回収しています。
ただ、小さな魚が、穴の開いた空き缶などのゴミを住処(すみか)として使っていることがあります。そのような場合は、そのままにしておくことにしています。

清掃はどのような想いで行っていますか

写真:「1ダイブ1善」をモットーに誇りを持って取り組んでいる様子

海中の清掃活動は、皆が気持ちよくダイビングを楽しむことができるよう、また、海に敬意を払って「1ダイブ1善」をモットーに誇りを持って取り組んでいます。もっとも、当会員のダイバーにとって、ゴミを拾う行為は特別なことではありません。自宅の玄関に落ちているゴミを拾うことと同じで、ごく自然なことです。

海中ゴミの調査も行ったとか

写真:水中で文字などを書くことができる専用のボード

海中のゴミを回収できるダイバーのスキルを生かして、2023年6月~10月の5カ月で70回ほどの調査を行いました。秋田県の「エコ活動支援助成金」の採択を受け、水中で文字などを書くことができる専用のボードなどをそろえ、男鹿半島の北浦、戸賀、加茂青砂エリアで、水深ごとのゴミの種類や量を細かく記録しました。記録したデータは分析し、一人でも多くの人が海の環境保全に関心を寄せてもらえるよう、調査結果を報告書にまとめて公開しました。

海岸の清掃活動について教えてください

写真:老若男女多くの皆さんと一緒に清掃しています

潜水する必要のない海岸の清掃活動は、老若男女、多くの皆さんと一緒に清掃しています。明るく、楽しくの気持ちで取り組んでいます。海岸などは、清掃の前後で景色が明らかに違って見えますので、参加した皆さんにも達成感を感じてもらえているようです。また、子どもの目には、見るもの全てが新たな発見なので、自然に触れあいながら、いい思い出にしてもらっているようですね。清掃活動に参加してくれた皆さんには、バーベキューをごちそうさせてもらうことを恒例行事にしています。

どのようなゴミが多いですか?

写真:飲料水のペットボトルゴミ

飲料水のペットボトルや空き缶、弁当の容器など、レジャーで捨てられたプラスチックのゴミがとても多いですね。海が荒れたときに流された漁網や釣り糸など、漁業 関連ゴミもあります。近年は、海外から漂着する洗剤の容器などのゴミも増えています。タイヤや廃油缶、冷蔵庫、洗濯機などの不法投棄と見られるものもあります。
特に昨年は、自然災害により、川から海に流れ出した流木なども多く見られました。故意に捨てられたゴミではありませんが、船の事故などにつながる危険があるので、対策が必要なのではと考えています。

海のゴミを増やさないために市民ができることを教えてください

写真:海のゴミを増やさないために市民ができることついて語る金澤武さん

大きなゴミは拾われやすいですが、積み重なるのは小さなゴミです。小さなゴミを出さないようにすることが大切だと思います。私たちもバーベキューを楽しむときは、マイカップ、マイお椀、マイ箸を使うようにしています。
レジャーなどで出たゴミをポイ捨てせずに持ち帰る意識は、かつてよりは高まっているように感じます。また、若者を中心にダイビングに対する目的意識が変わってきていると感じることもあります。私は、楽しむためにダイビングを始め、そのあとに清掃活動を始めましたが、環境保全のためにダイビングを始め、そのことが楽しむことにつながるとの意識を持つ若者も増えているようです。

秋田県の環境大賞も受賞されました

写真:秋田県の環境大賞受賞

ダイバーとしては、当たり前の取り組みにも関わらず、賞をいただいて恐縮な思いですが、会員の清掃活動へのモチベーションにつながりました。
秋田県には、男鹿半島を始め、全国から見ても恵まれた素晴らしい自然環境があります。そこでは、海の生き物を間近に見て、体で感じることができます。海の偉大さや尊さと同時に、儚(はかな)さや脆(もろ)さも感じられます。海中の世界をレジャーとして楽しんでいる私たちは、 私たちが生まれた母なる海への恩返しをしたいと考えています。
清掃活動に参加したいとの声をもらえれば、どなたでも大歓迎です 。未来の明るい海につなげられるよう、皆さんと一緒に優しい気持ちで海をきれいにしていきたいですね。