秋田ウッド株式会社 代表取締役社長 三浦功達さん
1999(平成11)年、廃プラスチック・廃木材を活用した新建材の製造事業調査の実施を皮切りに、2002(平成14)年、秋田県大館市にリサイクル素材が原料の新建材を製造・販売する会社を創業しました。
県内外から「エコ建材」として注目を集める「秋田ウッド株式会社」社長の三浦功達さんに話を聞きました。
事業内容について教えてください

自社ブランド「AO-M Wood(エーオーエムウッド)」で再生有機系建材を製造・販売しています。創業者は私の父ですが、製材所の多い大館市では廃木材も多く出ることから、木の風合いを生かしながら、環境性能の高い再生有機系建材の製造会社として創業しました。
世界には多くの人工木材製品がありますが、リサイクル素材のみを原料に使い、木材配合率50%以上で高い性能を有する当社のような製品は全国的にも珍しいものと自負しています。また、有害物質を含まない安全性や、天然木では必要な防腐剤処理がいらない環境性にも優れ、風雨や塩害に強い対候性、朽ちにくい耐朽性、シロアリの食害がない防蟻性など多くのメリットを備えているのも特長です。
「秋田県認定リサイクル製品」の認定を受けているほか、東京都港区の「みなとモデル二酸化炭素固定認証制度」「JISマーク表示製品」「建築技術審査証明」「エコマーク」などの認定や証明も受けています。
事業を展開するうえで難しいことを教えてください

当社の製品は、製材所や木工所、建築解体現場などから出る廃木材を300ミクロンのサイズまで粉砕し、製品製造工場や家庭などから出る廃プラスチックを合わせて作るリサイクル原料100%のペレットで製造しています。そのため、さまざまな現場から出る廃木材や廃プラスチックを集めるための輸送費が必要ですし、多くの製造工程を経て製品化にいたるものです。しかし、20年ほど前の創業当初は、リサイクル製品への理解が得られないこともありました。例えば、建築資材の展示会などに出品すると「原料はゴミなのに価格が高い」と、市場の評価を得られない時代もありました。
環境に対する取り組みが盛んになった、ここ5年は、当社にとって追い風になっています。現在では、北海道から沖縄まで全国各地への納入事例があり、ほかの地域で出た廃材を当社に持ち込んで建材を製造し、現地に持ち帰って使いたいとの要望も増えてきました。
時代の流れで、製材所の廃業などにより廃木材の仕入れには苦労もありますが、「秋田ウッド」との社名にあるように、現在、より本物の木の風合いに近い製品などの開発に取り組んでいます。
自然環境について考えていることを教えてください

当社では市内の大手医療機器メーカー工場から出る多量の廃プラスチックをリサイクルしており、地元のCO2の排出を抑制することにつながります。また、伐採により地球温暖化に影響する熱帯地域の木材の代替になるため、森林を保護する側面もあります。
事業のこれからについて教えてください

木材とプラスチック両方の特長を持つ当社製品は、メンテナンス性に優れますが、汚れや傷を手入れする必要があります。
また、耐朽性は高いものの、施工から20年以上経ったものもあります。もともと、製品に製造工程で不良品が出たような場合、工場内で粉砕して原料に戻して作り直すことができる特長がありますので、修繕が必要だったり、施工物を解体する必要があったりする場合、工場に持ち帰って再粉砕し、リサイクルすることが可能なのです。SDGsの観点から、サーキュラーエコノミー(循環型経済)に適しているため、製品のリサイクルにもチャレンジしたいと考えています。
また、リサイクル製品はデザイン性が低いと思われがちですが、建材の断面のバリエーションを多く用意するなど意匠性にもこだわっています。工場見学に来た子どもたちからは、野球のバットを作ってほしいとの声をもらったこともあります(笑)。新しいアイデアがあれば、どんどん寄せてもらえればうれしいです。これまでの概念をくつがえすような製品の開発に取り組んでいきたいですね。
工場見学を受け付けているんですね

工場見学は、創業当初から受け付けています。エコ活動に取り組む大館市ですので、社会科見学などで訪れる小中高生のほか、一般の皆さんも受け入れています。
当社製品は、全国の公園など公共施設でも使われることも多く、旅行先などで当社の製品を見かけたとの声をかけてくれる方もいて、うれしく思っています。全国のさまざまな場所で当社の製品が使われていることは、地元に夢を与えられるものなのではないかと思います。かつて、社会科見学で当社を訪れた中学生が大人になり、当社で働いている社員もいますよ。
県民へのメッセージをお願いします

秋田県は自然豊かで、私自身、住んでいて素晴らしい地域だと感じています。また、洋上風力発電など自然エネルギーにも力を入れている地域です。当社でも木材とプラスチックだけではなく、ほかの廃材をリサイクルに活用できないかなど、自然環境に向き合いながら事業に取り組んでいきたいと考えています。
当社製品は、秋田県内外の公共の建物や公園などにも使われていますので、皆さんの目に留めてもらえればうれしいですね。