小坂町大川岱自治会 会長 大森昌雄さん

春の新緑、夏の深い緑、秋の紅葉、冬の雪景色など、季節ごとに全く異なる表情を見せ、いつ訪れてもその時期ならではの魅力を楽しむことができる十和田湖国立公園で、50年以上にわたり、地元住民や交流のある事業者と協力して景観維持や環境保全に取り組む団体があります。
十和田湖の将来を見据え、前向きに活動に取り組んでいる「大川岱自治会」(小坂町)です。令和6年度の「環境大賞」で秋田県知事の表彰を受けた、会長の大森昌雄さんに話を聞きました。
自治会の活動内容を教えてください。

1973年に「国立公園十和田湖の自然を守る会」を結成し、これまで、自治会員、地域と交流があるDOWAホールディングス様、地元のホテル及び観光事業者が協力しながら、地域内の国道454号線の歩道清掃を行っています。
また、5月から10月までの観光シーズンは毎月1回、湖畔鉛山から銀山までの6㎞の区間の歩道の清掃を行っているほか、春と秋の2回、湖畔や地区内の2つの桟橋周辺の清掃と国立公園内に侵入してきた特定外来植物「オオハンゴンソウ(※)」の駆除を行っています。
※ オオハンゴンソウは、北アメリカ原産のキク科の植物(多年草)。草丈は1mから3m程で、7月から10月に開花します。
観賞用として明治中期に導入されたものが野生化し、現在、日本国内のほぼ全域に侵入しています。
繁殖力が強いだけでなく、周囲の植物を枯らす成分を分泌するため、在来植物に悪影響を与えるとして外来生物法に基づく『特定外来生物』に指定
されており、栽培、保管、運搬、野外に放つこと、譲渡することなどが禁止されています。
活動に至る経緯、活動で心がけていることや苦労していることなどを教えてください。
豊かな自然を次の世代である子どもたちに残し、十和田湖を訪れる観光客の方々にも美しい自然を感じていただきたいとの思いから活動を行っています。
国道の歩道を清掃する際に、参加者が交通事故等に遭わないよう、特に気をつけていますが、近年は、湖畔にもクマが出没するようになったため、クマによる人身被害の防止対策が課題となっています。
清掃活動を行う数日前から自治会員が地域を巡回してクマの出没情報を収集し、収集した情報を持ち寄り、清掃活動を実施するか判断しています。
また、清掃活動を行う際には、参加者全員に熊鈴と熊撃退スプレーを配付し、携帯させています。
清掃はどのような想いで行っていますか、また、どのようなゴミが多いですか?
地元住民の協同奉仕作業を通じて、高齢者から若年層までの幅広い世代間で交流が深まればとの想いで行っています。
以前はタバコの吸い殻が目立ちましたが、最近はレジ袋などが若干見受けられる程度となりました。
拾ったゴミが、私たちの行動の結果であり、同時に、未来の美しい環境を守るための第一歩であると信じています。
特定外来植物の駆除活動も行っているんですね!
十和田湖畔でも特定外来植物のオオハンゴンソウが野生化しているため、年2回駆除作業を行っています。
オオハンゴンソウは地下茎でも繁殖するため、地上部を刈り取るだけでは再生します。
そのため、スコップなどを使って、地下茎や根が少しでも残らないように根こそぎ掘り起こす必要があります。
掘り起こしたオオハンゴンソウは、生きたまま持ち運ぶことが法律で禁止されているため、ツートンバックの中に入れて枯死させて、6か月後に完全に土になっている事を確認した上で、同じ場所に戻しています。
ここ数年、オオハンゴンソウの駆除作業を実施してから、再度発芽することは認められません。
オオハンゴンソウの駆除作業は、大変な労力を要するため、男性の方々の協力が必要となっています。
毎回、参加者は20名~30名程ですが、1人20株~30株を目安に、1回で1,000株程を駆除しています。
今後も継続して取り組んでいきたいと考えています。
活動を通じて環境保全について感じたことは?
ポイ捨てされたタバコの吸い殻やレジ袋など、さまざまな種類のゴミを拾う中で、環境を汚染する原因が多種多様であること、また、1人ではわずかなゴミしか拾えなくても、参加者全員で協力すれば地域が大きくきれいになることを実感しています。
これは、環境保全には多くの人の「小さな行動」の積み重ねが重要であるという気づきに繋がりました。
また、オオハンゴンソウの駆除は、力と根気のいる作業ですが、在来の植物や生物多様性を守り、自然環境を回復させるという重要な役割を担うため、「地域の生態系を守っている」という達成感と、長期にわたる継続的な作業を通じて「自然の回復を実感できる」やりがいを感じています。
今後の展開について
自治会員はもとより、企業や団体にも協力を呼びかけ、これまで培った清掃活動や特定外来植物の駆除活動を継続していくとともに、外来種対策の講習会なども開催していきたいと考えています。
また、青森県側の休屋地区などにも声をかけ、協力してオオハンゴンソウの駆除に取り組んでいきたいと考えています。
秋田県の環境大賞を受賞されました!

これまでの活動を評価いただき、とても嬉しく、将来に向けて大変励みになっています。
私たちの活動は、地域の豊かな自然を守り、次世代に引き継いでいくことを目指しています。
これからも、自治会員、関係者の皆さまとともに、より良い環境づくりに貢献できるよう、一層の努力を続けていきます。
県内外の皆さんにメッセージをお願いします。
空気も水もおいしい、ゴミのない十和田湖へぜひお越しください。
皆さまのお越しを心よりお待ちしています!
取材先
小坂町大川岱自治会