二ツ井宝の森林(やま)プロジェクト 代表 野呂勝彦さん

森林資源の活用と地域活性化を両立させている「二ツ井宝の森林(やま)プロジェクト」。
地域通貨の導入や林地残材の資源化など、ユニークな手法で持続可能な地域づくりに挑戦する同プロジェクトの取り組みについて、代表の野呂勝彦さん(前列左端)にお話を伺いました。

貴団体について御紹介ください。

  • 薪クラブ
     
     
     

  • 原木きのこに関する作業風景

  • 原木コマ打ち作業風景
二ツ井宝の森林(やま)プロジェクトは、豊富な森林資源を次世代に継承し、地域の活性化を図ることを目的に、平成24年3月に能代市二ツ井町梅内聚落(しゅうらく)の有志で設立されました。
活動理念の根幹は、「地域の宝である森林(やま)を守り育て、そこから生まれる資源を活用して地域を元気にする」ことです。
  
当初は、間伐などで捨てられていた林地残材を回収し、チップ材などとして販売していましたが、現在は、個人の杉林を借りて間伐し、薪として販売するなど、森林資源を生かした様々な活動を展開しています。
「地域資源の活用」と「共同作業の楽しさ」をキーワードに、楽しく活動しながら地域経済への貢献を目指しています。

梅内聚落の魅力を教えてください。



  • 馬子岱公園そばのどば

  • 山菜クラブ

梅内聚落は、世界自然遺産・白神山地を源流とする種梅川沿いに点在する11の小集落からなり、人口約350人、約160世帯の自治会組織です。
最大の魅力は、聚落林655ha、個人有林1,200haという広大な山林を所有し、住民が古くからその恩恵を受けて生活してきたという点です。
この豊富な資源を背景に、聚落が主導して発足した「二ツ井宝の森林(やま)プロジェクト」と、女性を中心とした「梅内山菜倶楽部」(平成28年発足)が、それぞれの強みを活かして元気に活動しており、地方自治法に基づく地縁団体法人格も取得しています。

具体的な活動内容を教えてください。

  • 薪づくり倶楽部(作業時の様子)
    薪づくり倶楽部(作業時の様子)
  • 薪づくり倶楽部(運搬時の様子)
    薪の駅プロジェクトの様子
  • 生え杉くん(杉の丸太をくり抜いたプランター)
    生え杉くん(杉の丸太をくり抜いたプランター)

  • チェンソー体験
    チェンソー体験
  • 二ツ井小もみじ植樹体験
    二ツ井小もみじ植樹体験
  • 二ツ井小木工作体験
    二ツ井小木工作体験

「森林整備」、「資源活用」、「体験活動」の3つの柱で、多岐にわたる活動を行っています。
 
1 資源活用・販売
 ○木の駅プロジェクト:林地残材をチップ材などに活用しています。
 ○薪の駅プロジェクト:手入れの行き届かない個人の杉林を借りて間伐し、その材を薪として販売しています。
 ○木工品の製作販売:「秋田杉の3兄弟」として販売しています。
  ・燃え杉くん(杉の丸太を加工したスウェーデントーチ)
  ・掛け杉くん(杉の幹先を加工したキーホルダー・ネックレス掛け)
  ・生え杉くん(杉の丸太をくり抜いたプランター)
 
2 森林整備・体験活動
 ○薪づくり倶楽部:聚落の雑木林から自家用ストーブの薪を採取する活動を行っています。
 ○森林(やま)の手入れ・体験活動:
  ・都市住民や学生等を対象とした「チェンソー体験」などを実施しています。
  ・二ツ井小学校3年生を対象に、森林(やま)に親しむ活動を年間を通じて実施しています。
 
 

地域通貨があると伺っていますが、どのようなものか教えてください。

地域通貨「宝券」
プロジェクトの活動は全て共同作業としており、その労働対価として、現金ではなく、地域の商店で使える地域通貨「宝券(たからけん)」を採用しています。
○仕組みと価値:
 「壱宝(いちたから)」は千円相当の価値を持ち、商品券と同様に使用できます。
 
○利用:
 二ツ井町商工会と連携し、傘下の商店で買い物が可能です。
 
○流通状況と効果:
 ・年間約100万円が流通し、これまでの累計で1千万円以上が使用されています。
 ・地域経済への波及効果に加え、地域通貨で物が買える楽しさや社会的意義を実感できることが大きな効果となっています。

山菜倶楽部を発足させ、県外への出荷を行っていると伺いましたが、その内容について教えてください。

  • ワラビ収穫(作業風景)

  • ワラビ収穫(休憩風景)

  • 山菜倶楽部

  • 山菜倶楽部

  • ワラビの選別

  • 塩蔵作業

皆伐などで森林(やま)の手入れが進み、林道が開設されたことで、身近な場所で山菜の生育が見られるようになり、これを活用できないか県庁に相談したのが山菜商業化のきっかけです。
 
3月のバッケ(ふきのとう)から始まり、タラの芽、コシアブラ、ワラビ、ミズなどが続きます。また、シイタケ、ナメコの栽培も行っています。
山菜は、首都圏のスーパーや道の駅ふたついなどに出荷しており、ネット販売も少数ながら行っています。年間で300万円ほどの売り上げがあります。
 
活動は、「みんなで楽しくコーヒータイム」が始まりで、今は「みんなでステーキ」に変化しています。
今後も森林整備により、さらなるフィールド確保が見込まれるため、特定非営利法人あきた元気ムラGBビジネスと連携し、販路の確保に努める考えです。

薪の販売事業において、林地残材の活用や個人の杉林の手入れを通じて、具体的にどのような環境保全と資源の循環利用を実現しているか教えてください。

  • 薪クラブ

  • 薪づくり倶楽部(作業風景)

  • 薪を軽トラで林道まで運搬

森林(やま)そのものが環境保全に役立っていますが、手入れをすることで効果が高まります。 
現在は、皆伐や間伐で発生する林地残材(枝葉も含む)がほとんどなくなり、すべて資源として回収されています。

プロジェクトでは、手入れの行き届かない個人の杉林を借りて間伐し、その材を薪などとして活用することで、資源の循環利用を実現しています。

キノコの植菌やチェンソー講習などの体験活動を通じて、参加者や地域住民の森林保全意識は具体的にどのように変化しましたか?

  • 二ツ井小 キノコの植菌
    二ツ井小 キノコの植菌
  • 二ツ井小 枝打ち作業体験
    二ツ井小 枝打ち作業体験
  • チェンソー体験
    チェンソー体験

体験活動は、参加者や地域住民の森林保全意識の向上に寄与しています。

○二ツ井小学校3年生への効果
 年3回の活動(4月:キノコの植菌、6月:枝打ち作業体験等、10月:ふれあいの森散策と木工品製作)を通じて、森林(やま)の持つ魅力や環境保全の大切さを学んでいるほか、2月に行われる活動報告に招待していただき、交流を深めています。
 学校からは、自然とのふれあいが少ない子どもたちにとって、「非日常の体験はありがたい」との声が寄せられています。
 
○チェンソー体験の効果
 6月と9月の年2回実施しています。
 初心者は最初エンジン音に驚くものの、操作方法や安全性を理解すると楽しく講習を受けています。
 ここ数年、地元の若手がスタッフに加わり、講習がパワーアップした結果、受講者からは満足の声をいただいています。

整備活動の結果として、森林の生態系や水質など、環境面で観測された最も大きな変化は何ですか?

  • 間伐前の杉林

  • 間伐した杉林

本プロジェクトでは、補助事業の対象にならない小面積の個人の杉林を借りて間伐を行うことに重点的に取り組んでいます。
 
間伐の実施により、以前は暗くモヤシの様な状態であった林が、明るく、見晴らしの良い状態に変化しました。この変化により、森林の健全性が向上し、生態系や水質保全への効果も期待されています。

この活動に参加している方々は、主にどのような世代・属性で、どのような楽しさややりがいを感じていますか?



  • 薪づくり倶楽部

  • 山菜倶楽部

発足当初は60代以上が中心で、高齢者の活躍、居場所づくり的な性格を持っていましたが、最近は若手も加入し、老若が仲良く活動しています。
聚落の役員がプロジェクトの役員を兼任しているため、地域内の認知度が高く、若手の活動が年配者の活動の励みにもなっています。
 
活動が10年以上継続し、その社会的意義が理解されてきたことが大きなやりがいとなっています。

環境大臣表彰を受賞されました!

  • 環境大臣表彰受賞の様子

  • 環境大臣表彰受賞の様子

昨年の秋田県環境大賞に続き、今回の環境大臣表彰を受賞できたことは、「本当にありがたい」の一言です。10数年にわたる活動が「ようやく世間に認められた」と大きな喜びを感じています。
 
この受賞を励みに、さらなる課題への挑戦をみんなで取り組んでいきたいと考えています。

今後の環境保全活動のビジョンを教えてください。

代表野呂勝彦さん

聚落では、能代市や森林組合の支援を得て、データ管理や境界の明確化などに取り組んでおり、これは全県的にもめずらしく先進的な取り組みです。
 
これに基づき、住民自身が森林(やま)の手入れに関わるシステム構築も検討されています。このシステム構築は、持続可能な地域づくりへの大きな一歩となります。
地域内のまとまりと、地域外の方々の協力で、この歩みを進めていきたいと考えています。

県民の皆様に向けて、メッセージをお願いします。

代表野呂勝彦さん私達の活動は、梅内聚落だからできるのではなく、コツコツとみんなで相談して実践してきました。
悩みや葛藤もいっぱいありますが、前を向いていればそこには希望もアイデアも湧いてきます。
 
ぜひ私達と一緒に地域の元気に取り組みませんか。そのためのヒントづくりに、一度梅内を訪れてみてください。

取材先

二ツ井宝の森林(やま)プロジェクト

秋田のがんばる集落応援サイト「あきた元気ムラ」でも紹介しています。
 
 
※Geminiにより生成した画像を使用しています。